省略(判決理由参照)
建物の所有を目的とし、かつ返還の時期を定めない土地使用賃借契約の終了が認められた事例
民法597条2項
判旨
返還時期の定めのない使用貸借において、借主が貸主との信頼関係(本社・末社関係)を一方的に拒絶し、かつ貸主による多額の移転費用の提供申出も拒否した場合には、民法597条2項(現598条2項)但書の「使用及び収益をするに足りる期間」が経過したとして、貸主による解約が認められる。
問題の所在(論点)
返還時期の定めのない土地の使用貸借において、借主が貸主との組織的従属関係を解消した場合、民法597条2項但書(現598条2項)にいう「使用及び収益をするに足りる期間」が経過したといえるか。
規範
返還時期の定めがない使用貸借において、借主が「使用及び収益をするに足りる期間」(民法597条2項但書、現598条2項)を経過したか否かは、使用貸借契約の目的、経過期間、目的物の利用状況、及び貸主・借主間の信頼関係の動向等を総合的に考慮して判断する。特に、特定の人的・組織的関係を前提とした無償貸与において、借主がその前提となる関係を拒絶し、かつ貸主が代替措置を講じている場合には、期間の経過を認めやすい。
重要事実
本件土地は、本社(貸主)が末社(借主)に対し、末社として神社活動を行うことを目的として無償貸与されたものである。借主は戦後、独立の宗教法人として設立登記を行い、貸主との本社・末社関係を維持することを一方的に拒絶した。貸主は本件土地の明け渡しを求める際、社殿の移転費用として3000万円という多額の金銭提供を申し出たが、借主はこれも拒否して居住を継続した。
事件番号: 昭和42(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年11月24日 / 結論: 棄却
父母を貸主とし、子を借主として成立した返還時期の定めがない土地の使用貸借であつて、使用の目的は、建物を所有して会社の経営をなし、あわせて、右経営から生ずる収益により老父母を扶養する等判示内容のものである場合において、借主は、さしたる理由もなく老父母に対する扶養をやめ、兄弟とも往来をたち、使用貸借当事者間における信頼関係…
あてはめ
本件貸与は、借主が貸主の末社として活動することを目的としていた。借主が宗教法人として独立し、貸主との本社・末社関係を拒絶したことは、貸借の前提となった信頼関係および目的を根底から覆すものである。また、貸主が3000万円という多額の移転費用を提示している事実は、借主が本来受けるべき投下資本回収等の利益を十分に補償するものであり、借主が「使用及び収益をするに足りる期間」を既に享受したことを基礎付ける。したがって、貸主による解約は正当である。
結論
本件土地の使用貸借は解約可能であり、貸主の明渡請求は認められる。また、本件解約が憲法20条違反や権利濫用にあたることもない。
実務上の射程
特定の人的結合(本末関係や親族関係等)を前提とした使用貸借において、その関係が破綻した際の「目的に従った使用収益の終了」を認定する際のリーディングケースである。答案上では、期間経過の有無を判断する際に、単なる年数だけでなく「貸借の動機・目的」と「現在の人間関係の破綻」を相関的に論じる際に用いる。
事件番号: 昭和44(オ)375 / 裁判年月日: 昭和45年10月16日 / 結論: 破棄差戻
省略(判文参照)
事件番号: 昭和34(オ)578 / 裁判年月日: 昭和38年9月17日 / 結論: 破棄差戻
親が子の建築居住する建物の敷地として宅地を貸与する使用貸借関係にあつては、特段の反対事情の認められない限り、少くとも黙示的に使用の目的を右建物所有のためと定めたものと認定するのが経験法則に合する。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…