県警察本部の県外出張に係る旅費の支出について住民監査請求がされた場合において,当該住民が県の情報公開条例に基づき上記出張に関する資料の開示を求めたところ,当初は,上記出張の旅行期間,目的地,用務等の事項が開示されず,その部分開示決定に対する異議申立ての結果,初めてこれらの事項が開示されるに至り,その1か月後に上記監査請求がされたなど判示の事実関係の下では,上記監査請求が上記支出のあった日から1年を経過した後にされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由がある。
県警察本部の県外出張に係る旅費の支出のあった日から1年を経過して住民監査請求がされたことについて地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるとされた事例
地方自治法242条2項
判旨
住民監査請求の期間制限における「正当な理由」の有無は、請求者が単なる憶測を超えて、財務会計上の行為に違法・不当な点があると判断し得る程度にその内容を知った時から相当な期間内に請求されたかにより判断すべきである。本件では、情報公開請求により出張の具体的詳細が開示され、架空出張等の疑いを具体的に判断可能となった時から起算すべきである。
問題の所在(論点)
住民監査請求の期間制限(行為から1年)に関し、情報公開請求で多くの情報が黒塗りされていた場合、地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」が認められるための「知ることができた」時期の判断基準が問題となる。
規範
地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」があるか否かは、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても、客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができなかったといえるか、あるいは、知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかによって判断する。ここでいう「内容を知る」とは、単なる憶測ではなく、当該行為に違法又は不当な点があると考えて監査請求をするに足りる程度に具体的な情報を把握することを指す。
事件番号: 平成10(行ヒ)51 / 裁判年月日: 平成14年7月2日 / 結論: 破棄自判
1 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に地方自治法2…
重要事実
宮城県の住民である上告人が、県警察の架空出張に伴う旅費の不当支出を疑い、情報公開請求を行った事案である。第1次開示では、本件各出張に関する旅行期間、目的地、用務、旅費額等の主要部分が墨塗りされており、上告人は特定の出張のみを対象に監査請求を行い、本件各出張については見送った。その後、異議申立てを経て、出張の詳細が明らかになる第2次開示を受けたのは、第1次開示から約2年後であった。上告人は第2次開示から1か月後に、本件各出張について本件監査請求を行ったが、原審は第1次開示の段階で不正を疑うべき諸事実を知り得たとして、期間経過により不適法と判断した。
あてはめ
本件各出張に関しては、第1次開示において目的地や旅費額等が墨塗りされており、上告人において出張が架空か否か、業務上の必要性があるか否かを判断することは困難であった。この段階で不正を主張しても単なる憶測の域を出ない。したがって、第2次開示によって旅行期間や目的地等の具体的な内容が明らかにされる以前の段階では、監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができたとはいえない。そうすると、第2次開示から1か月後になされた本件監査請求は、知ることができた時から相当な期間内になされたといえる。
結論
本件監査請求には、1年の期間を経過したことについて「正当な理由」が認められるため、適法である。
実務上の射程
住民監査請求の適法要件に関する射程。行政側が情報を秘匿・隠蔽している場合、住民側が断片的な事実から不正を「推測」できるだけでは足りず、具体的な違法性を主張可能な程度に「特定」できる資料を得た時を起算点とするため、住民側の出訴期限を柔軟に認める機能を持つ。
事件番号: 平成12(行ヒ)76 / 裁判年月日: 平成14年7月18日 / 結論: 棄却
日本下水道事業団が市から建設の委託を受けた施設の設備工事を業者に発注した場合において,業者らが談合した結果,同事業団と業者との間で不当に高額の代金で工事請負契約が締結され,委託者として最終的にその工事請負代金を負担する市に損害を与えたことが,上記業者らの市に対する不法行為に当たり,市は上記業者らに対し損害賠償請求権を有…
事件番号: 平成13(行ツ)38 / 裁判年月日: 平成14年9月17日 / 結論: 破棄差戻
市が公園用地とするために買い受けた土地の売買契約の締結及び売買代金の支出について住民監査請求がされた場合において,買収予定区域を明示した都市計画案の縦覧並びに市への所有権移転登記及び市土地台帳への登録がされ,市の決算説明書の記載から1?当たりの売買価格の平均値が明らかとなっていたなど判示の事実関係の下においては,上記決…
事件番号: 平成15(行ヒ)231 / 裁判年月日: 平成17年11月17日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体の財産の適正な対価によらない譲渡又は貸付けにつき地方自治法237条2項の議会の議決があったというためには,議会において当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたことを要する。
事件番号: 平成20(行ヒ)97 / 裁判年月日: 平成21年4月28日 / 結論: 破棄差戻
市の発注したごみ焼却施設の建設工事に関し業者らが談合をしたため市が損害を被ったにもかかわらず,市長が上記業者らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,市の住民が地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,怠る事実に係る相手方である上記業…