1 町の豊かな自然を生かし,住民に農業に親しむ機会を与えるなどの目的で設置された農林漁業体験実習施設,食堂等から成る公の施設の管理及び運営の事業を行うため,町により設立された権利能力のない社団が,町から委託を受けて専ら上記施設の管理及び運営に当たっていたこと,上記社団は,その運営収支の赤字を補てんするため町から毎年補助金の交付を受けていたが,食堂営業の収入を増加させることを目的とし,それに伴う人件費の増加による赤字の発生の防止についても一応の見通しを持って,新たな調理員を雇い入れたことなどの判示の事情の下においては,町が,上記施設を存続させるため,上記の雇入れにより増加した上記社団の赤字を補てんするのに必要な補助金を交付したことが,地方自治法232条の2に定める公益上の必要を欠くとはいえない。 2 地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において,これを提起した住民が請求を放棄することはできない。 (1につき反対意見がある。)
1 町が公の施設を存続させるためその管理及び運営を委託している権利能力のない社団の赤字を補てんするのに必要な補助金を交付したことが地方自治法232条の2に定める公益上の必要を欠くとはいえないとされた事例 2 地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づく住民訴訟における請求の放棄の可否
地方自治法232条の2,地方自治法244条1項,挟間町陣屋の村自然活用施設の設置及び管理に関する条例(平成2年挾間町条例第15号)2条,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号,民訴法266条
判旨
地方公共団体が公の施設の管理・運営を委託する団体に対し、その運営赤字を補填するために補助金を交付することは、特段の事情がない限り、地方自治法232条の2に定める「公益上の必要がある場合」に該当し適法である。事務処理上の問題により赤字が増大したとしても、直ちに公の施設の設置目的や存在意義が失われるわけではなく、支出判断が不合理とはいえない。
問題の所在(論点)
公の施設の運営受託団体の事務処理上の不備(経営上の裁量逸脱)に起因して生じた赤字を補填するための補助金交付が、地方自治法232条の2の「公益上の必要がある場合」の要件を欠き、違法となるか。
規範
地方自治法232条の2に基づく補助金の交付における「公益上の必要がある場合」の判断は、普通地方公共団体の長の裁量に委ねられている。公の施設の設置目的等に照らし、その運営主体の赤字を補填するために補助金を交付するとの判断が一般的に不合理でなければ、原則として公益上の必要性が認められる。また、運営主体による事務処理に問題があり、それによって赤字が増加したという事情があったとしても、直ちに施設の存在意義が失われるものではなく、それだけで補助金交付を不合理な措置ということはできない。
重要事実
挟間町(町)は、条例に基づき設置した自然活用施設「陣屋の村」の管理・運営を、町長Eが理事長を兼ねる振興協会に委託していた。同施設は赤字が続いていたが、Eは食堂の売上増を狙い、増収の見通しや他の調理員の解雇等の対策を確定させないまま新たに調理員を雇用した(本件雇用)。その結果、赤字が大幅に増加したが、Eは町長として、この赤字を補填するため800万円の補助金(本件補助金)を交付した。住民は、放漫な経営により増大した赤字の補填は公益上の必要を欠き違法であるとして、Eの相続人に対し損害賠償を求めた。
あてはめ
まず、陣屋の村は町の自然活用や都市交流促進という条例上の目的を持つ公の施設であり、その運営赤字を補填する補助金交付は一般的に不合理ではない。次に、本件雇用について、Eは和食調理の評判を高めて売上を増加させるという目的を有しており、人件費増加に伴う赤字防止の一応の見通しを持っていたといえるから、経営上の裁量を逸脱した放漫な行為とはいえない。仮に振興協会の事務処理に問題があり赤字が増大したとしても、それだけで施設を存続させるための補助金交付が特に不合理な措置になるとは解されない。したがって、本件補助金の交付に公益上の必要性は認められる。
結論
本件補助金の支出は、地方自治法232条の2の要件を満たし適法である。また、住民訴訟において提起した住民は請求を放棄することができず、被上告人の放棄は効力を生じないが、本件請求自体には理由がないため棄却される。
実務上の射程
地方公共団体の補助金交付に関する裁量権を広く認める判例である。特に、長が補助金を受ける団体の代表者を兼ねている場合でも、直ちに裁量権逸脱とはせず、施設の設置目的という客観的な公益性を重視する。答案上は、裁量権の逸脱・濫用(考慮不尽や他事考慮)の有無を検討する際のメルクマールとして活用できる。
事件番号: 平成18(行ヒ)79 / 裁判年月日: 平成22年2月23日 / 結論: 破棄差戻
市営と畜場の廃止に当たり市が利用業者等に対してした支援金の支出は,当該と畜場の利用資格に制限がなく,利用業者等と市との間に委託契約等の継続的契約関係はない上,当該と畜場は関係法令の改正等に伴い必要となる施設の新築が実現困難であるためにやむなく廃止されたという事実関係の下においては,利用業者等が当該と畜場を事実上独占的に…