1 市が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,地元の商工会議所に市職員を派遣し,その給与を支出した場合において,市と商工会議所との間に派遣職員の職務内容について具体的な取決めはなく,派遣職員は市の企画する商工業振興策と直接的な関連性が認められる諸事業には具体的に関与しておらず,派遣職員の職務の中心は商工会議所の内部的事務であったなど判示の事実関係の下においては,上記給与支出のうち欠勤者にも支給される諸手当を控除した残額分の支出は,違法である。 2 市が地元の商工会議所に市職員を派遣した当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において職務専念義務の免除等の方法による第3セクター等への職員派遣及び派遣職員に対する給与支出が行われていたこと,その給与支出の適否については定説がなく裁判例も分かれていたこと,市の商工会議所への職員派遣は条例の定める職務専念義務の免除等の法的手続を踏んで行われたことなど判示の事情の下においては,市が派遣職員に給与を支出したことにつき市長に過失があるとはいえない。
1 商工会議所に派遣された市職員に対する給与支出が違法であるとされた事例 2 商工会議所に派遣された市職員に給与を支出したことにつき市長に過失があるとはいえないとされた事例
地方公務員法24条1項,地方公務員法30条,地方公務員法35条,商工会議所法6条,茅ヶ崎市職員の職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和26年茅ヶ崎市条例第61号)2条,茅ヶ崎市一般職員の給与に関する条例(昭和26年茅ヶ崎市条例第74号)11条,民法709条,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
判旨
地方公務員の派遣に伴う給与支出が法的に違法と判断される場合であっても、当時の法制度が未整備で解釈が分かれていた等の事情があれば、任命権者に過失があるとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 派遣職員に対する給与支出の適法性。 2. 支出が違法とされる場合、当時の社会情勢や法制度の下で、市長に損害賠償責任を基礎付ける過失が認められるか。
規範
1. 職務専念義務の免除(地公法35条、30条)や給与支給の承認(同24条1項)が、各条文の趣旨に反する場合は違法となる。 2. 法律解釈に争いがあり、実務上の取扱いも分かれている場合、一方の見解を正当と信じて公務を執行した公務員に、直ちに過失があったとすることは相当ではない。
重要事実
茅ヶ崎市長(上告人)は、市内の商工業振興を目的とし、市条例に基づき職員を商工会議所に派遣した。その際、職務専念義務を免除し、欠勤による給与減額をしない承認をして給与を全額支給した。しかし、当該職員は会議所の内部的事務に従事しており、市の具体的施策への関与は限定的であった。住民(被上告人ら)は、この給与支出が違法であるとして損害賠償を求めた。
あてはめ
1. 派遣職員の職務実態が会議所の内部的事務中心であり、市の行政目的達成への公益上の必要性が認められないため、給与支出は地公法の趣旨に反し違法である。 2. もっとも、当時は地方公務員派遣の法制度が未整備であり、全国的に同様の派遣が行われ、下級審の判断も分かれていた。市長は条例上の手続を履践して支出を行っており、正当な解釈と信じることに相当の根拠があったといえる。
結論
給与支出自体は違法であるが、上告人である市長に故意または過失は認められず、住民側の請求は棄却される。
実務上の射程
地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟(賠償請求)において、行為の客観的違法性と公務員の過失(責任)を切り分けて判断する際のリーディングケースである。特に、判例による規範確立前の解釈の争いが過失を否定する有力な事情となることを示している。
事件番号: 昭和58(行ツ)132 / 裁判年月日: 昭和61年2月27日 / 結論: 破棄差戻
一 普通地方公共団体の住民が地方自治法二四二条の二第一項四号に基づく代位請求訴訟により同法二四三条の二第一項所定の職員に対し同項の規定による損害賠償を求める場合でも、同条三項所定の賠償命令があることを要しない。 二 普通地方公共団体に対するその長の損害賠償責任については、地方自治法二四三条の二の適用はない。
事件番号: 平成19(行ヒ)215 / 裁判年月日: 平成20年11月27日 / 結論: 破棄自判
県が,退職した教職員に支払う退職手当に係る源泉所得税を国に納付するに当たり,その納付に必要な県知事の出納長に対する払出しの通知が遅滞した結果,法定納期限後の納付となり,延滞税及び不納付加算税の納付を余儀なくされた場合において,上記遅滞の原因は上記払出通知を専決処理する権限を有する教育委員会財務課長からその事務を任されて…
事件番号: 平成13(行ヒ)266 / 裁判年月日: 平成16年1月15日 / 結論: その他
1 県が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に県職員を派遣し,その給与を支出した場合において,上記派遣が,同社に事業収入がなく,同社が十分な人材を確保していないことを考慮して行われたこと,同社の事業内容は遊園施設等の経営であったこと,派遣職員が従…