1 県が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に県職員を派遣し,その給与を支出した場合において,上記派遣が,同社に事業収入がなく,同社が十分な人材を確保していないことを考慮して行われたこと,同社の事業内容は遊園施設等の経営であったこと,派遣職員が従事した職務の内容は同社の業務全般に 及んでいたこと,派遣人数は延べ13人,派遣期間は約7年間に及んだことなど判示の事実関係の下においては,上記給与支出は,違法である。 2 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結し,派遣職員につき職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして給与を支出した場合において,上記協定が地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反して違法であるとしても,上記協定締結当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたことなど判示の事情の下においては,上記協定が私法上無効であるということはできない。 3 県が,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で,県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結した当時,地方公務員の派遣に関する法制度が整備されないまま,全国各地の地方公共団体において第3セクター等への職員派遣が行われており,職務専念義務の免除による職員派遣の場合には派遣職員の給与を支出する例が多かったこと,その適否については定説がなく,裁判例も分かれていたこと,県の同社への職員派遣は条例等の定める職務専念義務の免除等の法的手続を踏んで行われたことなど判示の事情の下においては,上記協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえない。
1 いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に派遣された県職員に対する給与支出が違法であるとされた事例 2 県といわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で締結された県職員を同社に派遣してその給与を県が負担することを内容とする協定が私法上無効であるとはいえないとされた事例 3 県がいわゆる第3セクター方式により設立された株式会社との間で県職員を同社に派遣してその給与を負担することを内容とする協定を締結して派遣職員に給与を支出したことにつき知事に過失があるとはいえないとされた事例
地方公務員法24条1項,地方公務員法30条,地方公務員法35条,職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和28年岡山県条例第49号)2条,岡山県職員給与条例(昭和26年岡山県条例第18号)14条,職務に専念する義務の特例に関する規則(昭和28年岡山県人事委員会規則第10号)2条,民法90条,民法709条,地方自治法2条17項,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号
判旨
第三セクターへの職員派遣に伴う給与支出が地方公務員法に違反し違法であっても、派遣協定自体が私法上無効でない限り不当利得返還請求は認められず、また当時の実務上の混乱に照らせば知事に過失は認められない。
問題の所在(論点)
1. 地方公務員法に反する職員派遣に伴う給与支出の違法性。 2. 給与負担を定めた派遣協定の私法上の有効性と不当利得返還義務の成否。 3. 違法な公金支出を行った知事の損害賠償責任(過失)の有無。
規範
1. 職員の職務専念義務免除及び給与支給の承認は、地方公務員法(24条1項、30条、35条)の趣旨に反する場合は違法となる。 2. 派遣協定の私法上の効力については、公務員法上の規定は直ちに契約を無効とする強行規定ではなく、公序良俗違反や、違法性が明白で規定の趣旨を没却する等の特段の事情がない限り、私法上無効とはならない。 3. 法解釈に争いがあり実務上の取扱いが分かれている状況下で、公務員がいずれか一方の見解を正当と解して公務を執行した場合は、直ちに過失があったとは認められない。
重要事実
岡山県は、第3セクター「倉敷チボリ公園」運営会社に対し、県職員を約7年間にわたり延べ13人派遣し、県が給与を全額負担する本件協定を締結した。県側は条例に基づき職務専念義務を免除し、給与を支給したが、住民が知事(第1審被告D)への損害賠償と運営会社(第1審被告会社)への不当利得返還を求めて住民訴訟を提起した。当時は第3セクターへの派遣手法について法整備が未熟で、実務上も職務命令や専念義務免除など多様な運用がなされており、裁判例も分かれていた。
あてはめ
1. 本件派遣は、営利企業である会社の組織確立や資金調達等の業務全般に及び、派遣期間も長期であった。これは特定の公益上の必要性を欠き、地方公務員法の趣旨に反し、給与支出は違法である。 2. しかし、協定締結当時は全国で同様の派遣が広く行われており、法的な適否の定説もなかった。したがって、協定が公序良俗に反する、あるいは違法性が明白で趣旨を没却する等の「特段の事情」はなく、私法上有効であるため、会社に不当利得は成立しない。 3. 知事の過失についても、条例等の手続を踏んでおり、実務や見解が分かれていた当時の状況に照らせば、過失があったとはいえない。
結論
給与支出自体は違法であるが、派遣協定は私法上有効であるため運営会社の不当利得返還義務は否定される。また、知事についても故意・過失が認められないため、住民の請求はいずれも棄却される。
実務上の射程
地方公務員の派遣・給与支出の違法性判断基準(行政法)と、その支出の根拠となる私法上の契約の効力(民法との交錯)を区別する。特に住民訴訟4号請求における不当利得返還のハードル(特段の事情)と、国家賠償責任における過失の判断枠組みを示す際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和58(行ツ)149 / 裁判年月日: 昭和63年3月10日 / 結論: その他
普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関としての機能を適切に果たすために合理的な必要性があるときは、その裁量により議員を海外に派遣することができる。
事件番号: 平成17(行ヒ)304 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結する場合であっても,次の(1)又は(2)のときには,当該売買契約の締結は違法となる。 (1) 上記委託契約を締結した普通地方公共団体の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱…
事件番号: 平成13(受)216 / 裁判年月日: 平成15年4月11日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる観光ビザにより我が国に滞在した外国人であるデザイナー甲が,アニメーション等の企画,撮影等を業とする株式会社乙の従業員宅に居住し,その事務所で作業を行い,乙から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受けて給料支払明細書も受領し,乙の企画したアニメーション等に使用するものとして図画を作成したなど判示の事実関係の下にお…