普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関としての機能を適切に果たすために合理的な必要性があるときは、その裁量により議員を海外に派遣することができる。
普通地方公共団体の議会の当該議会の議員を海外に派遣する権能
地方自治法第2編第6章第2節
判旨
地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」とは、財務会計上の行為を行う権限を法令上本来有する者または委任により有するに至った者を指し、権限のない議長はこれに含まれない。また、地方議会は合理的な必要性がある限り、裁量により議員を海外派遣することが可能である。
問題の所在(論点)
1. 財務会計上の権限を持たず「出張命令書」等に押印したに過ぎない市議会議長は、法242条の2第1項4号の「当該職員」にあたるか。 2. 議会による議員の海外派遣決定およびそれに伴う公金支出は適法か。
規範
1. 地方自治法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは、当該訴訟において適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者、及びその者から権限の委任を受けるなどして当該権限を有するに至った者をいう。 2. 普通地方公共団体の議会は、議決機関としての機能を適切に果たすために必要な限度で広範な権能を有し、合理的な必要性があるときは、その裁量により議員を海外に派遣することができる。
重要事実
堺市議会議員による東南アジア(本件①)および米国(本件②)への行政視察旅行が行われ、市公金から旅費等が支出された。市長(被告B3)が支出命令を行い、市議会議長(被告B1・B2)は「出張命令書」等に押印していた。住民(原告)は、これらの支出を違法として、市長への損害賠償請求および議長への賠償請求(4号請求)を求めて提訴した。
あてはめ
1. 堺市の財務会計規則等によれば、予算執行の権限は市長にあり、議長に委任された根拠もない。議長による「出張命令書」等への押印は、法104条に基づく議長としての事務統理権の行使に過ぎず、財務会計上の行為(支出負担行為等)とは認められない。したがって、議長は「当該職員」に該当しない。 2. 海外派遣については、議会運営委員会や議員総会において適正な手続を経て決定されており、地方議会の有する合理的な裁量の範囲内にあると認められる。したがって、当該決定に基づく支出に違法はない。
結論
1. 議長に対する訴えは、被告適格(当該職員性)を欠き不適法であるため却下される。 2. 市長に対する請求は、議員派遣の決定に裁量権の逸脱・濫用がなく適法であるため棄却される。
実務上の射程
住民訴訟4号請求の被告適格を「財務会計上の権限の有無」で厳格に画定した点に射程がある。権限のない上司の指示や形式的な関与者は「当該職員」に含まれない。また、議員の海外視察に関する議会の裁量を広く認めており、政務活動費等の事案でも参照される。
事件番号: 平成2(行ツ)138 / 裁判年月日: 平成3年12月20日 / 結論: その他
地方公営企業の管理者が、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合には、右補助職員は、専決により処理した財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において、地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当する。