一 地方公営企業の管理者は、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合であっても、右専決により処理された財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において、地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当する。 二 地方公営企業の管理者の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決により処理した場合は、管理者は、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である。
一 自己の権限に属する財務会計上の行為を補助職員に専決により処理させた者と地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」 二 自己の権限に属する財務会計上の行為を補助職員に専決により処理させた者の損害賠償責任
地方自治法242条の2第1項4号,地方公営企業法34条
判旨
地方公営企業の管理者が補助職員に事務を専決させた場合、管理者は住民訴訟における賠償責任の対象(当該職員)に該当するが、損害賠償責任を負うのは、補助職員の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反したという帰責事由がある場合に限られる。
問題の所在(論点)
住民訴訟(地方自治法242条の2第1項4号)において、事務を補助職員に専決させていた地方公営企業の管理者は「当該職員」として損害賠償責任を負うか。また、その責任が発生するための要件は何か。
規範
1. 地方自治法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは、財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有する者及び権限の委任を受けた者を広く意味する。地方公営企業の管理者は同法上の長と同視すべき地位にあり、事務を専決させた場合でも「当該職員」に該当する。 2. 専決制度において、財務会計上の権限は内部的に補助職員へ委ねられているため、管理者は、補助職員による違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り、賠償責任を負う。
重要事実
大阪府水道企業の管理者(被告・上告人)の下、総務課長Dが100万円未満の支出事務の専決権限を有していた。Dは、実際には開催されない他自治体職員との会議接待を仮装し、虚偽の経費支出伺を作成・決裁して、合計約68万円の公金を支出した(本件各支出)。本件各支出は正当な目的によるものではなかった。住民が管理者に対し、損害賠償を求めて住民訴訟を提起したところ、原審は「補助職員は管理者の手足にすぎない」として管理者の責任を認めたため、管理者が上告した。
あてはめ
1. 管理者は、地方公営企業法に基づき財務会計上の権限を本来的に有する者であるため、事務決裁規程により総務課長Dに専決させていたとしても、依然として「当該職員」に該当する。 2. もっとも、専決事項については内部的にDの判断に委ねられている。本件において、Dが虚偽の書類を作成して違法な支出を行った際、管理者がこれを阻止すべき指揮監督上の義務に違反した(故意・過失により阻止しなかった)といえるか否かが賠償責任の成否を分ける。原審は、この指揮監督上の帰責事由の有無を検討せず、Dの行為を直ちに管理者の責任とした点で誤りがある。
結論
管理者は「当該職員」に該当するが、補助職員が専決した違法行為について賠償責任を負うには、管理者自身に指揮監督上の義務違反(故意・過失)が認められる必要がある。本件は帰責事由の有無を審理させるため、原判決を破棄し差し戻した。
実務上の射程
地方自治体の長が補助職員に専決させている事務全般に及ぶ。答案では、長の「当該職員」該当性を肯定した上で、責任の有無については「指揮監督上の義務違反」という個別の帰責事由を検討する枠組みとして用いる。補助職員が「手足」であることを理由とする無過失責任的な構成を否定する際に重要となる。
事件番号: 昭和58(行ツ)149 / 裁判年月日: 昭和63年3月10日 / 結論: その他
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事件番号: 平成17(行ヒ)304 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
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