一 住民監査請求は、その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を他の事項から区別し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示し、また、右行為等が複数である場合には、右行為等の性質、目的等に照らしこれらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除き、各行為等を他の行為等と区別し、特定して認識できるように個別的、具体的に摘示してしなければならない。 二 監査請求書に「昭和五五年度から同五七年度までの間に水道企業管理者、水道部長、同総務課長の職にあった者は、右各年度において、名義を仮装し、会議接待を行ったとして、会議接待費又は工事諸費の名目のもとに、三年間で五〇〇〇万円以上の金額を不当に支出し、又は部下の不当支出を決裁した」と記載し、違法な公金の支出を証する書面として判示の新聞記事を添付してされた住民監査請求は、請求の対象の特定を欠くものとして不適法である。
一 住民監査請求における対象の特定の程度 二 住民監査請求が請求の対象の特定を欠くものとして不適法とされた事例
地方自治法242条1項,地方自治法242条の2第1項
判旨
住民監査請求の対象となる財務会計上の行為は、監査の端緒を与える程度では足りず、他の事項から区別して特定認識できるよう個別的・具体的に摘示する必要がある。複数の行為が対象となる場合、それらを一体として判断すべき特段の事情がない限り、各行為を個別的・具体的に摘示しなければ、その請求は不適法となる。
問題の所在(論点)
住民監査請求(地方自治法242条1項)において、対象となる財務会計上の行為等はどの程度特定される必要があるか。特に、多数の行為を包括的に対象とする場合の特定性の程度が問題となる。
規範
住民監査請求(地方自治法242条1項)は、特定の具体的な財務会計上の行為等の非違を防止・是正する制度である。そのため、対象となる行為等は、単に監査の端緒を与える程度ではなく、他の事項から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要する。また、対象が複数である場合は、性質・目的等に照らし一体とみるべき場合を除き、各行為を個別的、具体的に摘示することを要する。この程度の特定を欠く監査請求は不適法であり、監査委員は監査義務を負わない。
事件番号: 昭和58(行ツ)149 / 裁判年月日: 昭和63年3月10日 / 結論: その他
普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の議決機関としての機能を適切に果たすために合理的な必要性があるときは、その裁量により議員を海外に派遣することができる。
重要事実
上告人らは、大阪府水道部において昭和55年度から57年度の3年間にわたり、会議接待費等の名目で5000万円以上の不当支出があったとする新聞記事に基づき、住民監査請求を行った。監査請求書には、支出の主体系や名目、総額(5000万円以上)等の記載はあったが、個々の支出の日時、金額、支出先、目的等は明らかにされていなかった。なお、当該支出は数百回を超える多数回にのぼるものであった。
あてはめ
本件で対象とされた会議接待費等の支出は、その違法・不当性を個々の支出ごとに判断すべき性質のものである。しかるに、本件請求では、支出時期が3会計年度という長期間にわたり、支出回数も数百回に及ぶと推認されるにもかかわらず、支出の日時や各金額、具体的な支出先等が摘示されていない。総額も「5000万円以上」と不特定であり、新聞記事を併せ見ても、個々の支出を他の支出から区別して特定認識できる程度に個別的、具体的に摘示されているとは認められない。したがって、本件請求は特定を欠き不適法である。
結論
本件監査請求は請求の特定を欠き不適法である。したがって、適法な監査請求を経たものとはいえず、本件住民訴訟は却下されるべきである。
実務上の射程
住民監査請求の適法要件(特定性)に関するリーディングケースである。答案上は、監査請求前置(242条の2第1項)の充足性を検討する際の「適法な監査請求」の判断基準として用いる。実務上は、情報公開制度等を活用して可能な限り支出を特定する必要があることを示唆している。なお、本判決は包括的な監査請求を否定しているが、後の判例法理では「一連の行為」として一体性を認める例外もあり、あてはめでは行為の性質(個別判断の要否)への言及が重要となる。
事件番号: 平成2(行ツ)138 / 裁判年月日: 平成3年12月20日 / 結論: その他
地方公営企業の管理者が、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合には、右補助職員は、専決により処理した財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において、地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当する。