一 熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和二八年熊本市条例第二二号)六条は、職員を臨時に従事させた勤務について特殊勤務手当を支給しないことが、同条例二条及び別表に掲げられた伝染病作業手当、清掃等作業手当、夜間看護手当など一三種類の特殊勤務手当の支給の対象となる勤務との対比において不合理であると認められるような場合に、市長が、応急的措置として、特殊勤務手当を支給することを許容したものと解するのが相当である。 二 市長が、熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和二八年熊本市条例第二二号)六条に基づくものとして、休憩時間を繰り下げて午後零時から午後一時までの時間に窓口業務に従事した職員に対し継続して特殊勤務手当を支給したことは、同条によって市長に許容された範囲を超え、違法な公金の支出に当たる。
一 熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和二八年熊本市条例第二二号)六条の趣旨 二 市長が熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和二八年熊本市条例第二二号)六条に基づくものとしていわゆる昼休み窓口業務に従事した職員に対し特殊勤務手当を支給したことが違法であるとされた事例
地方自治法204条2項,地方自治法204条3項,地方自治法204条の2,地方自治法242条の2第1項4号,地方公務員法25条1項3項4号,熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和28年熊本市条例第22号)2条,熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和28年熊本市条例第22号)6条,熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和28年熊本市条例第22号)別表
判旨
地方公共団体の職員に対する手当の支給は条例に基づく必要があり、臨時手当を定める条例規定は、応急的措置として不合理性を解消する場合に限り適用される。本件のような恒常的な窓口業務への手当支給を市長の裁量で行うことは、条例の根拠を欠き違法であり、市長には過失が認められる。
問題の所在(論点)
条例に種類が明記されていない手当を、市長が「臨時の手当」を定める包括的な条例条項に基づき支給することが適法か。また、それが違法な場合、市長に過失が認められるか。
規範
地方自治法204条3項及び地方公務員法25条1項の趣旨に照らせば、給与の種類や額は条例で定めなければならず、支給の可否を広く長の裁量に委ねることは許されない。もっとも、臨時かつ著しく特殊な勤務が生じ、条例上の他業務との均衡を失う不合理な事態が生じる場合には、例外として「臨時の手当」を定める条例規定に基づき、市長が応急的措置として支給を決定することが許容される。
事件番号: 平成29(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成30年11月6日 / 結論: 破棄自判
1 普通地方公共団体の財産の譲渡又は貸付けが適正な対価によるものであるとして議会に提出された議案を可決する議決がされた場合であっても,当該譲渡等の対価に加えてそれが適正であるか否かを判定するために参照すべき価格が提示され,両者の間に大きなかい離があることを踏まえつつ当該譲渡等を行う必要性と妥当性について審議がされた上で…
重要事実
熊本市は、昭和57年以降、昼休みの交代制による窓口業務を継続的に開始した。当時の市長は、特殊勤務手当の種類を限定列挙する条例別表に「昼休み窓口業務」が含まれていないにもかかわらず、条例6条の「臨時に手当を支給することができる」との規定を根拠に、別表改正を経ずに「昼窓手当」を長年支給し続けた。後任の被告市長も同様の運用を継続し、支出を行った。他自治体の調査では、同様の手当を支給する例はあったが、いずれも条例上の根拠が存在していた。
あてはめ
本件業務は昭和57年以降、継続的・恒常的に行われており、職員を「臨時に」従事させたとはいえず、応急的措置としての支給とは認められない。また、勤務内容も条例別表に掲げられた著しく危険・不快な職務等と比較して、手当を支給しないことが不合理な勤務とはいえない。したがって、本件支出は条例の根拠を欠き違法である。さらに、条例6条が臨時的・応急的な規定であることは文理上明白であり、他自治体の条例状況を調査すれば根拠の不備を知り得たのであるから、市長として尽くすべき注意義務を怠った過失が認められる。
結論
本件支出は条例に基づかない違法な公金の支出であり、市長には過失が認められるため、損害賠償責任を負う。
実務上の射程
地方自治法上の「給与条例主義」の厳格性を説く。条例に包括的・委任的な規定があっても、それが「臨時・応急」を旨とするものである場合、恒常的な手当の創設を長の裁量で行うことはできない。住民訴訟における長の過失認定において、条例解釈の合理性や調査義務の程度を検討する際の指標となる。
事件番号: 平成13(行ヒ)266 / 裁判年月日: 平成16年1月15日 / 結論: その他
1 県が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,いわゆる第3セクター方式により設立された株式会社に県職員を派遣し,その給与を支出した場合において,上記派遣が,同社に事業収入がなく,同社が十分な人材を確保していないことを考慮して行われたこと,同社の事業内容は遊園施設等の経営であったこと,派遣職員が従…
事件番号: 平成17(行ヒ)304 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体が,土地開発公社との間で締結した土地の先行取得の委託契約に基づく義務の履行として,当該土地開発公社が取得した当該土地を買い取る売買契約を締結する場合であっても,次の(1)又は(2)のときには,当該売買契約の締結は違法となる。 (1) 上記委託契約を締結した普通地方公共団体の判断に裁量権の範囲の著しい逸脱…
事件番号: 平成22(行ヒ)136 / 裁判年月日: 平成24年4月23日 / 結論: 破棄差戻
1 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の損害賠償請求権を放棄する旨の議会の議決がされた場合において,当該請求権の発生原因である公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響(その違法事由の性格や当該職員の帰責性等を含む。),当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有…
事件番号: 平成15(行ヒ)299 / 裁判年月日: 平成18年1月19日 / 結論: その他
県が,県議会議員の職にあった者の功労に報いるとともにその者らに引き続き県政の発展に寄与してもらう趣旨で,その者らのうち会則の趣旨に賛同する者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために補助金を交付した場合において,同補助金の対象となった事業がいずれも同会の会員を対象とした内部的な行事等であってその事業自体に公益性を…