県が,退職した教職員に支払う退職手当に係る源泉所得税を国に納付するに当たり,その納付に必要な県知事の出納長に対する払出しの通知が遅滞した結果,法定納期限後の納付となり,延滞税及び不納付加算税の納付を余儀なくされた場合において,上記遅滞の原因は上記払出通知を専決処理する権限を有する教育委員会財務課長からその事務を任されていた補助職員がこれを怠ったことにあるところ,通常の業務に属する同事務の処理を部下に任せることは同課の事務量や規模からして特に非難されるべきことではないこと,それまで同課では退職手当に係る源泉所得税の納付に必要な払出通知が遅滞したためにその納付が法定納期限後となったことはなかったことなど判示の事情の下においては,上記遅滞につき同課長に重大な過失があったとまでは認められず,同課長は県に対し地方自治法(平成18年法律第53号による改正前のもの)243条の2第1項後段の規定による損害賠償責任を負わない。 (補足意見がある。)
県が職員の退職手当に係る源泉所得税を法定納期限後に納付したため不納付加算税等の納付を余儀なくされた場合において,源泉所得税の納付に必要な出納長に対する払出通知が遅滞したことにつき,同払出通知に関する専決権限を有する職員に重大な過失はなく,同職員は県に対し地方自治法(平成18年法律第53号による改正前のもの)243条の2第1項後段の規定による損害賠償責任を負わないとされた事例
地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号,地方自治法(平成18年法律第53号による改正前のもの)243条の2第1項,地方自治法施行令(平成18年政令第361号による改正前のもの)168条の7第2項,静岡県財務規則(昭和39年静岡県規則第13号。平成19年静岡県規則第30号による改正前のもの)183条
判旨
地方自治法243条の2第1項(現行243条の2の2第1項)に基づく職員の損害賠償責任が認められるためには、職務上の義務違反について少なくとも重過失が必要であり、部下の事務処理上の過誤を把握し得なかった上司について、直ちに重過失による職務怠慢があったと断定することはできない。
問題の所在(論点)
地方公共団体の補助職員(助役)が、部下の事務上の過失により市が延滞金を負担する損害を被った場合において、当該助役に地方自治法243条の2第1項(現行243条の2の2第1項)にいう「重大な過失」による職務怠慢が認められるか。
規範
地方自治法243条の2第1項(改正前)に基づく賠償責任の成否は、職員が「故意又は重大な過失」により、その職務を行うに当たって法令に違反して損害を与えたか否かにより判断される。ここにいう「職務を行うに当たっての法令違反」としての職務怠慢があるというためには、単に結果として損害が発生したことのみならず、当該職員の当時の具体的職務内容、権限、事務処理体制等に照らし、義務違反が著しいもの(重過失)と認められることを要する。
事件番号: 平成10(行ヒ)51 / 裁判年月日: 平成14年7月2日 / 結論: 破棄自判
1 実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象としてされた住民監査請求において,監査委員が当該怠る事実の監査を遂げるためには,特定の財務会計上の行為の存否,内容等について検討しなければならないとしても,当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には,当該監査請求に地方自治法2…
重要事実
市の助役(当時)であった上告人は、退職手当の支払事務を所管していた。担当職員は、退職所得にかかる住民税の納付期限(3月10日)までに納税通知書の発行・送付を失念し、システム上のメール連絡も看過した。その結果、市は延滞金相当額の損害を被った。上告人は助役就任後間もなく、多忙な業務の中で具体的納税事務は部下に委ねていた。また、当時の事務処理システムにおいて、通知漏れを警告するメールは当日中に消滅する仕様であり、上告人がその存在を認識することは困難な状況にあった。
あてはめ
上告人は、助役として膨大な事務を掌理しており、個別の納税通知事務は専門の部下に委ねざるを得ない状況にあった。また、本件の通知漏れの原因は、担当職員がシステム上の通知を看過したという偶発的な過誤に起因する。当時のシステムの特性(警告メールが短時間で消滅する等)に照らせば、上告人が部下の過誤を具体的に予見し、または容易に発見して損害を回避し得た状況にはなかったといえる。したがって、監督責任としての注意義務違反があるとしても、それが「重大な過失」に該当するほど著しいものとは評価できない。
結論
上告人に重大な過失による職務怠慢があったとは認められず、地方自治法に基づく賠償責任は負わない。これと異なる原審の判断は破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、管理職にある職員の賠償責任について、部下の個別の事務ミスを直ちに上司の重過失と結びつけるのではなく、具体的な事務処理体制や監督の困難性を踏まえた限定的な解釈を示したものである。司法試験においては、住民訴訟における職員の責任追及の場面での判断枠組みとして重要である。
事件番号: 平成12(行ヒ)76 / 裁判年月日: 平成14年7月18日 / 結論: 棄却
日本下水道事業団が市から建設の委託を受けた施設の設備工事を業者に発注した場合において,業者らが談合した結果,同事業団と業者との間で不当に高額の代金で工事請負契約が締結され,委託者として最終的にその工事請負代金を負担する市に損害を与えたことが,上記業者らの市に対する不法行為に当たり,市は上記業者らに対し損害賠償請求権を有…
事件番号: 平成20(行ヒ)97 / 裁判年月日: 平成21年4月28日 / 結論: 破棄差戻
市の発注したごみ焼却施設の建設工事に関し業者らが談合をしたため市が損害を被ったにもかかわらず,市長が上記業者らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとして,市の住民が地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,怠る事実に係る相手方である上記業…
事件番号: 平成15(行ヒ)231 / 裁判年月日: 平成17年11月17日 / 結論: 破棄差戻
普通地方公共団体の財産の適正な対価によらない譲渡又は貸付けにつき地方自治法237条2項の議会の議決があったというためには,議会において当該譲渡等が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上当該譲渡等を行うことを認める趣旨の議決がされたことを要する。