一 普通地方公共団体の住民が地方自治法二四二条の二第一項四号に基づく代位請求訴訟により同法二四三条の二第一項所定の職員に対し同項の規定による損害賠償を求める場合でも、同条三項所定の賠償命令があることを要しない。 二 普通地方公共団体に対するその長の損害賠償責任については、地方自治法二四三条の二の適用はない。
一 地方自治法二四二条の二第一項四号に基づく代位請求訴訟により同法二四三条の二第一項の損害賠償を求める場合と同条三項所定の賠償命令の要否 二 普通地方公共団体に対するその長の損害賠償責任と地方自治法二四三条の二の適用の有無
地方自治法242条の2第1項4号,地方自治法243条の2
判旨
地方自治法243条の2第1項の「職員」に普通地方公共団体の長は含まれず、長の賠償責任は民法の規定による。また、同条所定の職員に対する賠償責任追及について、同条3項の賠償命令を経ることなく住民訴訟(法242条の2第1項4号)を提起することは適法である。
問題の所在(論点)
1. 地方自治法243条の2第1項に規定される、賠償責任の限定等の特則を受ける「職員」に、普通地方公共団体の長が含まれるか。2. 同条1項所定の職員の行為について、同条3項の賠償命令の手続を経ることなく、法242条の2第1項4号の住民訴訟を提起できるか(住民訴訟と賠償命令手続の関係)。
規範
1. 地方自治法243条の2第1項所定の「職員」には、広範な権限と重い職責を有する普通地方公共団体の長は含まれず、長の賠償責任については民法の規定が適用される。2. 同条1項所定の職員の行為による地方公共団体の損害賠償請求権は、要件を満たす事実があれば直ちに実体法上発生する。同条3項の賠償命令は簡便な責任追及手段を設けたものにすぎず、同命令を待たずして法242条の2第1項4号に基づく代位請求訴訟を提起することは許容される。
重要事実
上告人(住民)らは、被上告人(千葉県市川市長)が違法に市長交際費を支出したとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、市に代位して被上告人に対し損害賠償を請求する住民訴訟を提起した。原審は、地方自治法243条の2(職員の賠償責任)の規定は長にも適用または類推適用され、同条所定の監査・賠償命令手続によらなければ責任追及できないとして、本件住民訴訟を不適法却下したため、上告人が上告した。
あてはめ
1. 地方自治法138条の2等によれば、長は自らの判断と責任において事務を統轄する広範な権限を有しており、その職責の特殊性から他の職員とは区別されるべきである。したがって、法243条の2の「職員」に長は含まれず、その責任は民法の一般原則に従う。2. 法243条の2の趣旨は、職員の職務遂行を保護しつつ損害補填を迅速化する点にあるが、賠償請求権自体は違法行為時に実体法上発生している。住民訴訟制度は財務行政の適正確保を目的とする住民参政の一環であり、行政側の判断と住民の判断が対立する場合にこそ意義がある。ゆえに、賠償命令手続の存在によって住民訴訟の提起が制限されると解すべきではない。
結論
本件住民訴訟は適法である。地方自治法243条の2は、長に対しては適用されず、また他の職員が対象となる場合であっても、同条の手続を経ることは住民訴訟提起の要件ではない。
実務上の射程
住民訴訟(4号請求)において、長を被告とする場合には民法の不法行為・債務不履行責任の枠組みで主張を構成し、出納職員等を被告とする場合には法243条の2の要件(故意・重過失等)に基づき構成する。いずれの場合も、行政側の自発的な賠償命令を待つ必要はない。なお、本判決後の法改正等により、現在は「職員」の範囲や手続が整理されているが、住民訴訟の独立性を認めた判断枠組みは依然として重要である。
事件番号: 昭和61(行ツ)95 / 裁判年月日: 平成2年3月23日 / 結論: 棄却
市の指導要綱に基づき給水契約留保の措置をとり、水道法違反により起訴された市長個人のため、市がその弁護士費用一手数料・着手金)を支出することは、違法な公金の支出に当たる。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成19(行ヒ)215 / 裁判年月日: 平成20年11月27日 / 結論: 破棄自判
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