1 静岡県公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。平成12年静岡県条例第58号による全部改正前のもの)に基づき開示請求がされた公文書に記載された情報が虚偽であった場合において,同条例には開示請求に係る公文書の記載内容の真否を調査すべき旨の定めはなく,かえって,公文書の開示の可否は原則として開示請求書を受理した日から15日以内に決定しなければならないと定められており,公文書の開示請求はその性質上多数の文書を一括してすることが予定されているなど判示の事情の下においては,静岡県の担当職員が上記開示請求に係る公文書に記載された内容の真否を調査せずにその記載内容に基づき当該情報が同条例9条8号の非開示情報に当たると判断したことは,職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったものということはできず,国家賠償法上違法とはいえない。 2 静岡県公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。平成12年静岡県条例第58号による全部改正前のもの)に基づき一部非開示決定がされた公文書につき,同条例9条8号所定の非開示情報に該当することを理由に非開示とされた情報が虚偽であった場合において,実施機関である静岡県知事が上記情報が虚偽であることを知った後も同決定を取り消すことなく同決定に係る取消訴訟に応訴したことは,当該公文書が同訴訟の対象となった公文書のうちの一部であって,同訴訟においては,他の公文書についても同じ非開示情報該当性が争点となっていた上,当該公文書に記載された上記情報以外の情報についても別の非開示情報該当性が争点となっており,同訴訟の判決において知事の主張が認められた部分や最終的に知事の勝訴が確定した部分もあること,知事が同訴訟において虚偽の主張立証をしたこともうかがわれないことなど判示の事実関係の下においては,国家賠償法上違法とはいえない。 (1につき,補足意見及び反対意見がある。)
1 情報公開条例に基づき開示請求がされた公文書に虚偽の情報が記載されていた場合において県の担当職員が当該公文書の記載内容の真否を調査せずに当該情報が同条例の定める非開示情報に当たると判断したことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例 2 情報公開条例に基づき一部非開示決定がされた公文書に虚偽の情報が記載されていた場合において実施機関がこの事実を知った後も同決定を取り消すことなく同決定に係る取消訴訟に応訴したことが国家賠償法上違法とはいえないとされた事例
(1,2につき) 国家賠償法1条1項,静岡県公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。平成12年静岡県条例第58号による全部改正前のもの)9条8号 (1につき) 静岡県公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。平成12年静岡県条例第58号による全部改正前のもの)7条
判旨
公文書の非開示決定に取り消し得べき瑕疵があっても、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず漫然と決定したと認められる事情がない限り、国家賠償法上の違法とは評価されない。また、特段の事情がない限り、担当職員に開示請求に係る全文書の内容の真偽を調査すべき義務まではない。
問題の所在(論点)
公文書開示請求に対し、内容が虚偽である公文書に基づき非開示決定がなされた場合、決定担当職員に内容の真否を調査すべき義務があるか。また、かかる非開示決定や取消訴訟への応訴は国賠法1条1項の違法を構成するか。
規範
1. 条例に基づく公文書の非開示決定に取消事由たる瑕疵があるとしても、直ちに国賠法1条1項の違法となるわけではなく、公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と決定をしたと認められる場合に限り、違法と評価される。 2. 条例に真偽調査の規定がなく、短期間の開示期限(本件では15日)が定められている場合、一般に、担当職員において請求に係る全文書の内容の真偽を調査すべき義務はなく、文書の記載内容に基づき迅速に決定を行うことが予定されている。
重要事実
静岡県内に住む上告人が、知事に対し食糧費支出に関する公文書の開示を請求したところ、知事は「交際的な懇談」の相手方名称等を非開示とする決定(本件各決定)を行った。しかし、対象文書には実際には行われていない会合名(虚偽事実)が記載されており、その後の取消訴訟で非開示部分の取消判決が確定した。上告人は、虚偽公文書の作成や隠蔽を目的とした非開示決定、および不当な応訴が国賠法上違法であるとして損害賠償を求めた。原審は、決定担当者が虚偽であることを知っていたとはいえないとして請求を棄却した。
あてはめ
1. 本件各決定当時、審査会の答申内容には相応の理由があり、それに基づき「交際的な懇談」に当たるとした職員の判断は不合理とはいえない。決定担当者が文書の虚偽性を知っていたとは認められず、隠蔽目的も否定される。 2. 本件条例は15日以内の決定を求めており、大量の請求がなされる実態に鑑みれば、全文書の真偽調査を担当職員に義務付けることは困難であり、通常尽くすべき注意義務を怠ったとはいえない。 3. 応訴についても、本件が食糧費を巡る初の訴訟であり、司法の最終判断を求める必要性があったこと、一部の争点では知事側の主張が認められていたこと等から、著しく相当性を欠くとはいえない。
結論
本件各決定において一部非開示の判断をしたこと、および知事が取消訴訟に応訴したことは、いずれも国家賠償法1条1項にいう違法な行為には当たらない。
実務上の射程
行政処分の取消事由がある場合でも、国賠法上の違法性は「職務上の注意義務違反(漫然たる決定)」の有無で判断されるという、いわゆる職務義務違反説を再確認するものである。特に情報公開事務において、文書の記載内容の信憑性に疑義がある場合でも、原則として形式的な記載内容に基づく判断が許容される範囲を画した点に意義がある。答案では、行政処分の違法性と国賠法上の違法性の区別を論じる際の規範として活用できる。
事件番号: 平成17(受)277 / 裁判年月日: 平成19年3月20日 / 結論: 破棄差戻
A市内のパチンコ業者らが,A市内でのパチンコ店の出店を計画した競業者Xが出店予定地を購入したことを知り,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律4条2項2号及びこれを受けた条例によって児童福祉施設の敷地の周囲100mの区域内にある営業所について同法3条1項の営業の許可を受けることができないものとされている規制を利…