弁護士法23条の2第2項に基づく照会に対する報告を拒絶する行為が,同照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはない。 (補足意見がある。)
弁護士法23条の2第2項に基づく照会に対する報告を拒絶する行為と同照会をした弁護士会に対する不法行為の成否
弁護士法23条の2,民法709条
判旨
弁護士法23条の2に基づく照会(23条照会)権限は、制度の適正な運用を図るために弁護士会に付与されたものにすぎず、照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するとは解されないため、報告拒絶は弁護士会に対する不法行為を構成しない。
問題の所在(論点)
23条照会を受けた団体が正当な理由なく報告を拒絶した場合、照会主体である弁護士会に対する不法行為(民法709条)が成立するか。弁護士会に「法律上保護される利益」が認められるかが問題となる。
規範
23条照会の権限が弁護士会に付与されているのは、あくまで個々の弁護士による申出が制度趣旨に照らし適切か否かを自律的に判断し、制度の適正な運用を図るためである。したがって、弁護士会が当該照会に対する報告を受けることについて、不法行為法上の「法律上保護される利益」(民法709条)を有するとは解されない。
重要事実
弁護士Aは、詐欺被害に基づく損害賠償請求訴訟の和解後、強制執行準備のため所属弁護士会(被上告人)に対し、債務者の転居届の有無等についてC社へ23条照会をするよう申し出た。被上告人はこれを適当と認め照会したが、C社を吸収合併した上告人は報告を拒絶した。被上告人は、この報告拒絶が弁護士会の法律上保護される利益を侵害したと主張し、主位的に不法行為に基づく損害賠償を、予備的に報告義務の確認を求めて提訴した。
あてはめ
23条照会制度は、弁護士の事実調査等を容易にするためのものであり、照会を受けた団体等は正当な理由がない限り報告すべき公法上の義務を負う。しかし、弁護士会に付与された照会権限は、個々の弁護士の濫用を防ぎ適正な運用を確保するための gatekeeper 的な役割を担うものにすぎない。弁護士会自体が報告を受けることによって直接的な固有の利益を享受する関係にはない。したがって、報告がなされないことによって弁護士会自身に何らかの権利侵害や損害が生じるとはいえず、不法行為の要件を欠く。
結論
23条照会に対する報告を拒絶する行為は、弁護士会に対する不法行為を構成しない。不法行為に基づく損害賠償請求は棄却される。なお、報告義務の存否については別途審理が必要である。
実務上の射程
弁護士会側の損害賠償請求を否定したものであるが、報告拒絶の「正当な理由」の有無や、弁護士個人による損害賠償請求の可否については直接判断していない。答案上は、23条照会の公法的性質と弁護士会の権限の性格を論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 平成17(受)2126 / 裁判年月日: 平成19年4月24日 / 結論: その他
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