都職員が虚偽の証明書を発行したとは認められないとして不法行為の成立が否定された事例。
判旨
公務員が将来の見通しに基づき発行した証明書や説明が、申請者や相手方に対してその趣旨が十分に説明され、共通の認識が存在する場合には、直ちに虚偽の証明や説明として国家賠償法上の違法を構成することはない。
問題の所在(論点)
将来の見通しに基づく公文書の発行および説明が、国家賠償法1条1項にいう虚偽の証明・説明として違法性を帯びるか。
規範
国家賠償法1条1項の「違法」な職務執行(虚偽の証明・説明)に該当するか否かは、証明書の発行経緯、申請者および受領者の認識、説明の内容を総合的に考慮して判断される。将来の不確実な事実に関する証明であっても、その趣旨が当事者間に正しく伝達され、客観的な見通しに基づいている場合には、虚偽とはいえない。
重要事実
日本都市建設(株)は、土地区画整理組合の助成金増額が見込まれる中で、都建設局に対し、助成金を引当てに融資を得るため「立替金交付方に関する件証明願」を提出した。都建設局の課長は、昭和26年8月中には700万円を上回る助成金が交付される見通しを持っていたため、その旨の証明書を還付し、上告人代表者に対しても面接時にその趣旨を十分に説明した。しかし、その後上告人は、当該証明書等が虚偽であるとして都に対し損害賠償を求めた。
あてはめ
本件では、都の課長は助成金が交付される具体的な見通しに基づき証明書を発行している。申請者である会社側もその経緯と趣旨を熟知しており、かつ、上告人代表者自身も課長から面接の際に「助成金の趣旨に関する限りにおいて実現の見通しがある」旨の十分な説明を受けていた。このように、証明の対象となる事実の確実性について、当事者間で共通の理解が形成されている以上、助成金の額や時期が確定していなかったとしても、当該証明書や説明をもって虚偽ということはできない。
結論
本件の証明書発行および説明は、虚偽の事実を伝達したものとはいえず、国家賠償法上の違法性は認められない。
実務上の射程
行政庁による「見通し」の回答や証明書発行が問題となる事案で、受領者側がその前提条件や不確実性を認識していた(または行政側が説明を尽くしていた)場合に、違法性を否定する論拠として活用できる。信頼保護や不法行為の成否を争う際の考慮要素として「説明の有無・内容」と「相手方の認識」を重視する枠組みを示すものである。
事件番号: 昭和30(オ)947 / 裁判年月日: 昭和32年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表者が個人として損害賠償債務を連帯して負担する旨の合意が成立したか否かの認定において、当該法人の無資力や資産状況、及び車両所有権の移転経過等の間接事実を総合考慮して判断することは適法である。 第1 事案の概要:被害者である被上告人が、加害会社(上告会社)の代表者(上告人A)に対し、会社と連…