判旨
法人の代表者が個人として損害賠償債務を連帯して負担する旨の合意が成立したか否かの認定において、当該法人の無資力や資産状況、及び車両所有権の移転経過等の間接事実を総合考慮して判断することは適法である。
問題の所在(論点)
法人の代表者が個人として連帯債務を負担する旨の意思表示(合意)の認定において、会社の資産状況や車両の所有権移転といった間接事実を証拠資料として用いることが許されるか。
規範
契約の成立(意思表示の合意)の有無を認定するに際しては、直接的な証拠のみならず、当事者の資産状況、事業の実態、目的物の所有権の推移、及び訴訟における弁論の全趣旨等の間接事実を総合的に評価し、経験則に照らして判断の基礎とすることができる。
重要事実
被害者である被上告人が、加害会社(上告会社)の代表者(上告人A)に対し、会社と連帯して損害を賠償する合意が成立したと主張した。原審は、①会社が事故当時から事業実態がなく無資産であり、動産執行も不能であったこと、②事故車両が当初会社所有であったが事故後間もなく代表者個人名義に変更されたこと、③代表者Aが複数の会社の代表を兼ねる実態等の事実を認定し、これらを総合してA個人の連帯賠償責任の合意を認めた。A側は理由不備等を理由に上告した。
あてはめ
原審が採用した「動産執行不能調書」は、会社に差し押さえるべき資産がないという間接事実を証明する適法な証拠である。また、自動車登録原簿によれば、事故車両が事故後に会社から代表者個人へ移転している事実が認められる。これらの事実に、代表者が複数の会社を経営している実態や、弁論の全趣旨に含まれる諸資料を併せれば、会社に賠償能力がない状況下で代表者個人が賠償責任を負う旨を約したという事実認定は、経験則や論理法則に反せず、理由不備の違法もない。
結論
代表者個人が連帯して賠償する旨の合意を認めた原判決の事実認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
法人の債務について代表者の個人責任を追及する際、直接の合意書がない場合でも、法人の無資力(執行不能)や資産の個人流用、経営実態などの周辺事実を積み重ねることで、個人による保証や債務引き受けの意思表示を認定し得ることを示唆しており、事実認定の技法として重要である。
事件番号: 昭和31(オ)613 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない法的な構成(問屋類似行為)について、裁判所が釈明権を行使してその主張を促す義務があるとはいえない。当事者が主張する媒介または代理の事実に基づき、契約の成立を認めた原審の判断に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人の媒介または代理行為によって上告人とDセメント株式会…