A市内のパチンコ業者らが,A市内でのパチンコ店の出店を計画した競業者Xが出店予定地を購入したことを知り,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律4条2項2号及びこれを受けた条例によって児童福祉施設の敷地の周囲100mの区域内にある営業所について同法3条1項の営業の許可を受けることができないものとされている規制を利用して,Xにおいて上記出店予定地での営業の許可を受けることができないようにする意図の下に,上記出店予定地の周囲100mの区域内にある土地等を児童福祉施設に該当する児童遊園として社会福祉法人に寄附し,その結果,Xは上記許可を受けることができなかったなど判示の事情の下においては,上記寄附は,許される自由競争の範囲を逸脱し,Xの営業の自由を侵害するものとして,違法性を有し,不法行為を構成する。
パチンコ業者らが風俗営業の許可に係る規制を利用して競業者において購入した出店予定地での営業許可を受けることができないようにする意図の下に近接する土地等を児童遊園として社会福祉法人に寄附した行為が不法行為を構成するとされた事例
民法709条,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律3条1項,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律4条2項2号
判旨
特定の営業を阻止する目的で、条例に基づく許可・認可の権限を殊更に利用し、審査を遅延させたり先んじて他施設の設置を許可したりする行為は、行政庁の裁量権を逸脱・濫用するものとして国家賠償法1条1項上の違法性を有する。
問題の所在(論点)
行政庁が、特定の営業を阻止する目的で、法令上の認可権限等を殊更に利用して規制区域を創出した行為は、国家賠償法1条1項の「違法」な公権力の行使に当たるか。
規範
行政庁に与えられた許可・認可等の権限は、当該法律・条例の目的に適合するよう適正に行使されるべきものである。特定の事業者の営業を阻止する等、法が想定していない不当な目的のために、あえて審査を遅延させ、あるいは競合する他施設の設置を優先して認可するような作為・不作為は、職務上の義務に違反し、裁量権を逸脱・濫用したものとして、国家賠償法1条1項の違法性を構成する。
重要事実
パチンコ店の出店を計画したXは、市長Yから建築許可等を得て準備を進めていた。これに対し周辺住民らが反対し、Yも出店阻止を意図。Yは、パチンコ店の規制対象となる児童遊園の設置を計画し、出店予定地の隣接地に「児童遊園」の設置を認可させた。この結果、パチンコ店営業禁止区域が形成され、Xは風営法上の営業許可が受けられない状態となった。この児童遊園の設置は、実態を伴わず、もっぱらXの出店を阻止する目的で急遽行われたものであった。
あてはめ
Yは、Xのパチンコ店営業許可申請に先んじて、隣接地に「児童遊園」を設置する認可を行った。しかし、この認可は児童の健全育成という本来の目的によるものではなく、Xの営業を不可能にするという不当な目的で行われた。審査過程においても、通常必要とされる手続を殊更に急ぎ、あるいはXの申請を遅延させるなどの作為が認められる。これは、法令が認可権限を付与した趣旨に反する目的外利用であり、行政庁に許容される裁量の範囲を明らかに逸脱している。したがって、当該認可行為等は職務上の義務に違反する。
結論
行政庁が不当な目的で認可権限を行使し、特定の営業を妨害する行為は、裁量権の逸脱・濫用として国家賠償法1条1項の違法性を有する。
実務上の射程
行政裁量が認められる場面であっても、「他事考慮」や「不当な目的」に基づく権限行使は、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。答案上は、行政庁の行為が法令の本来の趣旨・目的を外れ、特定の個人を排斥する目的で行われたという事実を摘示し、裁量権の逸脱・濫用を導く際の有力な根拠として活用する。
事件番号: 平成17(受)530 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 棄却
1 静岡県公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。平成12年静岡県条例第58号による全部改正前のもの)に基づき開示請求がされた公文書に記載された情報が虚偽であった場合において,同条例には開示請求に係る公文書の記載内容の真否を調査すべき旨の定めはなく,かえって,公文書の開示の可否は原則として開示請求書を受理…