個室付浴場業の開業を阻止することを主たる目的として原判示の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいてされた知事の児童遊園設置認可処分は、たとえ右児童遊園がその設置基準に適合しているものであるとしても、行政権の著しい濫用によるものとして、国家賠償法一条一項にいう公権力の違法な行使にあたる。
個室付浴場業の開業を阻止することを主たる目的としてされた知事の児童遊園設置認可処分が行政権の著しい濫用によるものとして国家賠償法一条一項にいう公権力の違法な行使にあたるとされた事例
国家賠償法1条1項,児童福祉法35条3項,風俗営業等取締法4条の4
判旨
児童遊園の設置認可処分が、他者の営業を妨害する目的など不当な動機に基づき、本来の目的を逸脱してなされた場合には、行政権の著しい濫用として違法となる。また、当該違法な認可処分を前提としてなされた営業停止処分による損害については、認可処分との間に相当因果関係が認められる。
問題の所在(論点)
行政庁による児童遊園の設置認可処分が「行政権の著しい濫用」として違法とされるか。また、先行する認可処分の違法性と、それを前提になされた後行の営業停止処分による損害との間に相当因果関係が認められるか。
規範
行政庁の裁量権の行使であっても、その判断が法の目的・趣旨に照らして著しく妥当性を欠き、または社会通念上著しく不当であると認められる場合には、裁量権の範囲を逸脱し、またはその濫用があったものとして違法となる(行政事件訴訟法30条参照)。特に、特定の営業活動を排除するなどの不当な目的のために形式的に行政処分を行うことは、行政権の著しい濫用にあたる。
重要事実
被上告人(原告)の営業を阻止する目的で、本件児童遊園の設置認可処分がなされた。この認可処分がなされたことにより、距離制限規定等に抵触することとなった結果、被上告人に対して本件営業停止処分が下された。被上告人は、これら一連の処分によって損害を被ったとして、国または公共団体(上告人)に対し国家賠償請求を提起した。
あてはめ
本件認可処分は、児童の福祉向上という本来の目的ではなく、被上告人の営業を妨害・停止させるという不当な動機・目的でなされたものである。このような目的外の権限行使は、裁量権の逸脱・濫用にあたり、行政権の著しい濫用として違法と評価される。そして、被上告人が被った営業停止による損害は、この違法な認可処分を端緒とし、これを前提として直接的に引き起こされたものであるから、両者の間には相当因果関係が肯定される。
結論
本件児童遊園設置認可処分は行政権の著しい濫用として違法であり、これと相当因果関係にある営業停止処分の損害について、賠償請求を認容すべきである。
実務上の射程
行政裁量の濫用を理由に国家賠償責任を肯定した重要事例である。答案上は、裁量権の逸脱・濫用の判断枠組み(目的外行使)を提示する際に活用できる。また、先行処分の違法性が後行処分の効力に影響を与えるという「違法性の承継」的な文脈や、先行処分と最終的な損害との因果関係を論じる際にも参照しうる。
事件番号: 昭和43(オ)32 / 裁判年月日: 昭和47年6月27日 / 結論: 棄却
居宅の日照、通風は、快適で健康な生活に必要な生活利益であつて、法的な保護の対象にならないものではなく、南側隣家の二階増築が、北側居宅の日照、通風を妨げた場合において、右増築が、建物基準法に違反するばかりでなく、東京都知事の工事施行停止命令などを無視して強行されたものであり、他方、被害者においては、住宅地域内にありながら…