土地の所有者が市への土地の売却に係る長期譲渡所得につき租税特別措置法33条の4第1項1号所定の特別控除額の特例(平成13年法律第7号による改正前のもの)の適用がある旨の市の職員の誤った教示及び指導に従い上記特例の適用を前提として所得税の申告をし,更正及び過少申告加算税の賦課決定を受けた場合において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記教示及び指導により当該所有者に損害が発生したとはいえないとした原審の判断には,違法がある。 (1) 市は,都市計画施設の区域内の土地の買取りに当たり,当該土地の売却を希望する所有者が具体的に建築物を建築する意思を欠いている場合であっても,市の職員があらかじめ用意していた建築図面を申請書に添付させて形式的に建築許可の申請をさせ,その不許可の決定後に当該土地につき都市計画法56条1項の規定による買取りの申出をさせるという運用を,的確な法的根拠もないまま,長年にわたり組織的かつ主導的に行ってきた。 (2) 市の職員は,上記運用にのっとって,当該所有者に対しても,上記教示をしただけでなく,上記特例の適用を受けられるようにするために外形的に都市計画法56条1項の規定による土地の買取りであるかのような形式を整えさせ,上記申告をするように指導した。
土地の所有者が市への土地の売却に係る長期譲渡所得につき租税特別措置法33条の4第1項1号所定の特別控除額の特例(平成13年法律第7号による改正前のもの)の適用がある旨の市の職員の誤った教示及び指導に従い所得税の申告をし,過少申告加算税の賦課決定等を受けた場合において,当該所有者に損害の発生がないとした原審の判断に違法があるとされた事例
国家賠償法1条1項,租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの)33条の4第1項,都市計画法56条1項
判旨
地方公共団体の職員が組織的に行っていた不適切な運用に基づき、本来適用されない租税特別措置法上の特例が適用されると誤認して申告した納税者に対し、加算税相当額等の損害が生じたとして国家賠償法1条1項の責任を認めた。
問題の所在(論点)
行政庁の誤った税務教示及び指導に従って申告した結果、特例不適用により加算税等を課された場合、国家賠償法1条1項上の「損害」が認められるか。特に、適正な本税額を納付したに過ぎない場合に損害を肯定できるかが問題となる。
規範
公務員による不適切な教示・指導(違法な公権力の行使)により、本来受けられない税務上の特例の適用があるものと誤信して納税申告をした場合、適正な本税額の納付自体は損害とならないが、当該教示・指導がなければ発生しなかった過少申告加算税や延滞税、他の特例適用を検討する機会の喪失などは、相当因果関係のある損害に含まれ得る。
重要事実
名古屋市は、都市計画施設内の土地買取りに際し、所有者に建築意思がない場合でも、市側が用意した図面で形式的に建築不許可処分を経させることで、5000万円の特別控除(措置法33条の4)を適用させる不適切な運用を組織的に行っていた。上告人は、市職員の指導に従い特例を前提に申告したが、後に税務署から特例の適用を否定され、本税の更正及び加算税・延滞税の賦課決定を受けた。上告人は市に対し、納税額相当等の損害賠償を求めた。
あてはめ
本件土地の売却には措置法の特例適用はないため、上告人が適正な本税額を納付したこと自体は損害とはいえない。しかし、市職員は的確な法的根拠なく、組織的・主導的に法の趣旨に反する運用を行い、上告人に特例が適用される旨の誤った教示をし、外形的な不許可申請の形式を整えさせるなどの指導を行った。この違法な公権力の行使がなければ、上告人は特例適用を前提とする申告を行わなかったといえる。したがって、上告人に過失があるとしても、過少申告加算税相当額の損害が発生したことは明らかである。また、延滞税や他の特例適用の検討機会の逸失についても損害となる余地がある。
結論
本件行為と過少申告加算税等の発生との間には因果関係が認められ、上告人に損害が発生したといえる。原審の損害否定の判断には法令違反があるため、破棄差戻しとする。
実務上の射程
行政の誤った教示に対する信頼保護を損害賠償の文脈で認めた事例。本税そのものは「本来納めるべき額」であるため損害になりにくいが、不適切な指導により付随的に発生した加算税等については国賠法上の救済対象となることを明示した。
事件番号: 昭和36(オ)1204 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員による契約性質の誤認が直ちに国家賠償法1条1項の過失を構成するわけではなく、諸般の事情に照らして過失の有無が判断される。 第1 事案の概要:上告人と訴外Eとの間で締結された上告人所有土地に関する契約について、担当公務員(D等および被上告人)が当該契約を「鍬下契約(くわしたけいやく)」であると…
事件番号: 平成19(行ヒ)215 / 裁判年月日: 平成20年11月27日 / 結論: 破棄自判
県が,退職した教職員に支払う退職手当に係る源泉所得税を国に納付するに当たり,その納付に必要な県知事の出納長に対する払出しの通知が遅滞した結果,法定納期限後の納付となり,延滞税及び不納付加算税の納付を余儀なくされた場合において,上記遅滞の原因は上記払出通知を専決処理する権限を有する教育委員会財務課長からその事務を任されて…