地方税の賦課決定を受けた者が,その税額等を納付した上で同決定について審査請求をし,裁決がされないまま約1年2か月が経過した後に当該賦課決定の違法を理由として国家賠償請求訴訟を提起したところ,ほどなく課税庁が当該賦課決定を取り消し,過誤納金の還付等が行われたなど判示の事実関係の下においては,当該訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用のうち相当と認められる額の範囲内のものは,当該賦課決定と相当因果関係のある損害に当たる。
課税処分の違法を理由とする国家賠償請求訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用が当該処分と相当因果関係のある損害とされた事例
国家賠償法1条1項,民法416条,地方税法2条,地方税法17条,地方税法17条の4
判旨
違法な課税処分の取消しと過誤納金の還付を目的として国家賠償請求訴訟を提起し、実際に訴訟係属中に処分が取り消され還付がなされた場合、当該訴訟の提起・追行に係る弁護士費用は、相当と認められる額の範囲で当該処分と相当因果関係のある損害と解される。
問題の所在(論点)
違法な課税処分について、審査請求や還付制度等の救済手段が併存する状況下で、あえて国家賠償請求訴訟を提起した場合に、その支出した弁護士費用と課税処分の違法性との間に相当因果関係が認められるか。
規範
国家賠償法1条1項に基づく弁護士費用相当額の損害賠償請求において、公権力の行使(課税処分等)と弁護士費用との間に相当因果関係が認められるためには、当該訴訟の提起・追行が当該違法な処分の是正や損害の回復に寄与したといえる必要があり、その相当と認められる額の範囲内で因果関係を肯定する。
重要事実
上告人は東京都荒川都税事務所長から、建物所有者であるとして固定資産税等の賦課決定(本件課税処分)を受けた。上告人は設立中の法人こそが所有者であると主張して審査請求をしたが、1年2か月間裁決がなされなかったため、本件課税処分の違法を理由に国家賠償請求訴訟を提起した。訴訟係属中、処分庁は処分を取り消し、過誤納額と還付加算金を支払った。これを受け上告人は請求額を減縮したが、弁護士費用相当額については依然として損害であると主張した。
あてはめ
上告人が本件訴訟を提起することは法的に妨げられない。事実上、本件訴訟の提起および追行があったことによって本件課税処分が取り消され、過誤納金の還付等が行われて支払額の限度で損害が回復された。そうであれば、本件訴訟は損害回復に資する有効かつ必要な手段であったと評価でき、支出した弁護士費用のうち相当と認められる範囲については、本件課税処分から通常生ずべき損害として相当因果関係を肯定できる。
結論
本件訴訟の提起・追行に係る弁護士費用のうち、相当と認められる額については、本件課税処分と相当因果関係のある損害に当たる。
実務上の射程
行政不服審査や取消訴訟という直接の是正手段がある場合でも、国家賠償請求訴訟が実質的な権利回復(処分の撤回等)の契機となった場合には、弁護士費用の損害性が認められ得ることを示した。答案上は、国賠法1条1項の「損害」および「相当因果関係」の検討において、救済の相当性・実効性の観点から本判例の論理を用いるべきである。
事件番号: 平成17(受)530 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 棄却
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