一 通常の取引上固定資産の貸借の対価に相当する額に至らないとしても、その固定資産の使用に対する代償として金員が支払われている場合は、地方税法三四八条二項ただし書にいう「固定資産を有料で借り受けた」場合に当たる。 二 市が公共の用に供するために借り受けた土地につき、固定資産税を非課税とすることができないのに非課税措置を採ったことにより、通常の賃貸借における賃料額よりかなり低額の使用料を支払うにとどめる旨の合意に至った場合においては、右措置を採ったことにより被った固定資産税相当額の損害と右措置を採らなかったならば必要とされる土地使用の対価の支払を免れたという利益とは、損益相殺の対象となる。
一 地方税法三四八条二項ただし書にいう「固定資産を有料で借り受けた」とされる場合 二 市が公共の用に供するために借り受けた土地につき固定資産税を非課税とすることができないのに非課税措置を採ったことによる損害と右措置を採らなかったならば必要とされる右土地の使用の対価の支払を免れたという利益とは損益相殺の対象となるとされた事例
地方税法348条2項1号,東村山市税条例(昭和25年条例第4号)40条の6,地方自治法242条の2第1項4号,民法709条
判旨
地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟における損害額の算定においても、財務会計上の行為と相当因果関係にある利益が得られた場合には損益相殺を認めるべきであり、違法な非課税措置により賃料支払を免れた利益はこれに当たる。
問題の所在(論点)
住民訴訟において、違法な財務会計上の行為(非課税措置)によって税収相当額の損害が生じたとされる場合、その行為の結果として団体が支出を免れた利益(低廉な賃借による利得)を損益相殺の対象として控除できるか。
規範
1. 住民訴訟に基づく損害賠償請求権は私法上の損害賠償請求権と異ならないため、損害の有無・額の算定に際しては損益相殺を行うべきである。2. 財務会計上の行為により普通地方公共団体に損害が生じたとしても、当該行為の結果、団体が利益を得、又は支出を免れるという利得をした場合、両者の間に相当因果関係が認められる限り損益相殺を適用できる。
重要事実
東村山市長(上告人)は、市営テニスコート等の用地として民間土地を借り受ける際、所有者に対し「固定資産税を非課税とし、低額の報償費を支払う」という条件で合意した。市長はこの合意に基づき非課税措置(本件措置)を採ったが、地方税法上、有料による借受け(報償費の支払)がある場合は非課税要件を満たさないため、本件措置は違法であった。一方、本件土地の通常の賃料相場は、市が支払った報償費及び本来課されるべき固定資産税の合計額を大幅に上回っていた。
あてはめ
本件措置は、固定資産税を課さないことを前提に、通常の相場より著しく低額な報償費での土地使用を許諾させるという合意と一体不可分になされたものである。仮に市長が本件措置を採らずに適正な課税を行っていれば、土地所有者が低額な報償費のみで貸与を継続したとは認められず、市は近隣相場に従った高額な賃料を支払う必要があった。そうすると、市が本件措置を採ったことによる税収減という「損害」と、措置を採ったことで適正賃料の支払を免れた「利益」との間には、対価関係及び相当因果関係が認められる。本件における差引利益(免れた賃料額)は税相当額を上回るため、市に実質的な損害は発生していないと評価される。
結論
本件措置による損害と、それにより免れた賃料相当額の利益との間には相当因果関係があるため損益相殺が認められ、市に損害が発生したとはいえない。被上告人らの請求は棄却される。
実務上の射程
住民訴訟における損害概念を「実質的な財産の減少」と捉え、原因行為と密接に関連する利益を相殺することを認めた。答案上は、違法な支出や減収があっても、それと引き換えに自治体が本来要したはずの経費を免れた等の事情がある場合、損益相殺の法理を援用して損害の発生を否定する論理として活用できる。
事件番号: 平成16(受)633 / 裁判年月日: 平成16年12月17日 / 結論: その他
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