町長が、条例等に定められた基準による初任給の決定が行われていないため低くなっていた職員の給与の改善を目的として、条例に定める要件を考慮しないで昇給等により給与の調整をした場合において、その後に、過去の期間についてもこれと同一の目的で給与の調整措置を採る権限を町長に付与するとともに、改正前の規定に基づいて支給された給与を改正後の規定による給与の内払とみなすものとする旨の条例の改正がされたときは、右条例の改正は、町長の右調整をさかのぼって適法なものとしたものと解すべきである。
町長が昇給等の用件を考慮しないでした職員の給与の調整がその後の条例の改正によりさかのぼって適法なものとなるとされた事例
地方自治法204条,地方自治法204条の2,地方自治法242条の2第1項4号
判旨
町長が行った条例上の根拠を欠く給料支給行為であっても、後に同行為を遡及的に適法化する内容の条例が制定された場合には、当該行為の違法性は解消され、損害賠償義務は発生しない。
問題の所在(論点)
条例上の根拠を欠いて行われた公金支出行為が、事後の条例改正による遡及的適法化の措置によって、その違法性が解消されるか。
規範
地方自治法上の長が、適法な条例の根拠なく公金を支出した場合であっても、事後的に当該支出行為と同一の目的・内容の措置を認める条例が制定され、かつ当該条例が過去の支出を改正後の条例に基づく給与の内払いとみなす旨の遡及適用規定を置いている場合には、議会が当該支出行為自体を遡及的に適法なものとして是認したものと解するのが相当である。
重要事実
a町長(上告人)は、職員の給料格付の不均衡を是正するため、当時の給与条例が定める昇給要件(勤務成績等)を考慮せず、独自の「本件特別調整」として合計約3,543万円を増額支給した。その後、町議会は本件特別調整と同様の目的で昇給を認める改正条例を可決・施行。同条例附則には、過去の特別調整に基づく支給分を「改正後の条例による給与の内払いとみなす」との遡及規定が置かれた。住民(被上告人)は、改正条例施行前までの期間における運用利息相当額の損害賠償を求めた。
あてはめ
本件において、改正条例は昭和57年4月1日に遡って本件特別調整と同一目的の昇給権限を町長に付与している。さらに、改正前の規定に基づき支給された給与を、改正後の条例に基づく給与の内払いとみなす規定を置いている。これらの規定からすれば、a町議会は改正条例の制定により、上告人が行った本件特別調整およびそれに基づく増額給与の支給行為自体を遡及的に適法なものとして是認したといえる。したがって、支給時から改正条例施行までの期間についても、違法な支出に伴う利息相当額の損害賠償義務が発生する余地はない。
結論
改正条例の遡及適用により、支出行為は遡って適法となるため、上告人は運用利息相当額の損害賠償義務を負わない。
実務上の射程
地方自治法上の「住民訴訟」における長の損害賠償責任が問題となる事案で、事後の条例(追認的・遡及的な条例)による違法性治癒の可能性を認めた判例である。答案上は、当初の支出が違法であっても、その後の議会による適法化措置の有無や、その遡及適用の明文規定の有無を検討する際の根拠として用いる。
事件番号: 平成23(行ツ)406 / 裁判年月日: 平成25年3月21日 / 結論: 破棄自判
普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法に締結されたものであっても私法上無効ではない場合には,当該契約に基づく債務の履行として支出命令を行う権限を有する職員が当該契約の是正を行う職務上の権限を有していても,当該職員が上記債務の履行として行う支出命令は,次の(1)又は(2)のときでない限り,違法な契約に基づい…