普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法に締結されたものであっても私法上無効ではない場合には,当該契約に基づく債務の履行として支出命令を行う権限を有する職員が当該契約の是正を行う職務上の権限を有していても,当該職員が上記債務の履行として行う支出命令は,次の(1)又は(2)のときでない限り,違法な契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなることはない。 (1) 当該普通地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているとき。 (2) 当該契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真しに行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような,客観的にみて当該普通地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるとき。
普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法であっても私法上無効ではない場合において当該契約に基づく債務の履行としてされた支出命令の適法性
地方自治法138条の2,地方自治法232条の3,地方自治法232条の4第1項,地方自治法242条の2第1項4号
判旨
普通地方公共団体が締結した私法上有効な契約に基づく支出命令は、契約に違法事由があっても、特段の事情により契約を解消できる場合でない限り、財務会計法規上の義務に違反する違法なものとはならない。
問題の所在(論点)
先行する原因行為である契約が私法上有効かつ公法上違法である場合に、その履行としてなされた支出命令が財務会計法規上の義務に違反し違法となるか。また、支出命令権者は契約の是正権限を有することを理由に直ちに不作為の違法を問われるか。
規範
先行する原因行為(契約等)に違法事由があっても、支出命令行為自体が財務会計法規上の義務に違反しない限り、支出命令権者は賠償責任を負わない。契約が私法上有効である場合、自治体は給付義務を負うため、①契約の取消権・解除権を有しているときや、②契約が著しく合理性を欠き、かつ真摯な働きかけにより相手方が解消に応じる蓋然性が大きい等の「客観的にみて契約を解消できる特殊な事情」がある場合を除き、支出命令権者は支出を拒絶すべき財務会計上の義務を負わない。
事件番号: 平成23(行ヒ)452 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 破棄差戻
広域連合がし尿及び浄化槽汚泥の積替え保管施設等の用地として土地を賃借する契約につき,上記用地を確保するため当該土地を賃借する必要性,上記施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった事情について十分に考慮することなく,当該契約において鑑定評価を経ずに定められた賃料額が私的鑑定において適正とされた賃料額と比較して高額で…
重要事実
町(上告人)は、県道工事に伴う町有建物の取壊しに際し、入居していたB協議会との間で移転補償契約を締結し、補償金を支出した。住民(被上告人)は、当該契約が地方自治法2条14項等に違反して違法であるから、それに基づく支出命令も違法であるとして、当時の町長に対する損害賠償請求(住民訴訟4号)を求めた。原審は、契約は私法上有効だが違法であり、町長は契約を是正すべき職務上の義務に違反したとして請求を認容した。
あてはめ
本件移転補償契約は、違法に締結されたとしても公序良俗に反し私法上無効とはいえない。また、町が取消権や解除権を有していた事実はなく、B協議会への働きかけにより契約解消に応じる蓋然性が大きかったという特殊な事情も認められない。したがって、支出命令権者である町長が、契約に基づく債務の履行として支出を拒絶すべき財務会計法規上の義務を負っていたとはいえず、本件支出命令を違法とみることはできない。
結論
本件支出命令は財務会計法規上の義務に違反せず適法であり、上告人(元町長)は町に対して損害賠償責任を負わない。
実務上の射程
原因行為の違法が支出命令の違法を直ちに承継しないという「行為独立の原則」を前提に、私法上の義務がある場合の例外的な違法性判断基準を示した。答案上は、まず契約の私法上の効力を検討し、有効であれば本判例の「解消できる特殊な事情」の有無を検討する枠組みを用いる。
事件番号: 昭和61(行ツ)95 / 裁判年月日: 平成2年3月23日 / 結論: 棄却
市の指導要綱に基づき給水契約留保の措置をとり、水道法違反により起訴された市長個人のため、市がその弁護士費用一手数料・着手金)を支出することは、違法な公金の支出に当たる。 (反対意見がある。)