死刑の量刑が維持された事例(資産家夫婦強盗殺人事件)
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
判旨
死刑制度は憲法36条に違反せず、資産家夫妻を殺害・遺棄した強盗殺人等の事案において、周到な計画性、強固な殺意、結果の重大性を鑑みれば、前科がない等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
2名の殺害を伴う強盗殺人、死体遺棄、詐欺未遂の事案において、死刑の選択が量刑の妥当性を欠き、刑罰の均衡を失するものとして違法といえるか。あわせて死刑制度の憲法36条適合性が問題となる。
規範
死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様(殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(殺害された被害者数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からやむを得ない場合に認められる(永山基準参照)。また、死刑制度自体は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。
重要事実
被告人は、資産家夫妻の所持品を強奪するため、睡眠薬、ロープ、フック等を準備し、死体遺棄用の土地を購入して穴を掘るなどの準備を行った。夫妻を車に誘い出し、多量の睡眠薬を服用させて抵抗不能な状態にした上で、首に掛けたロープを車体の一部に引っ掛けて牽引し、両名を絞殺した。その後、死体を土中に遺棄し、強奪したカードで約381万円相当の物品を騙し取ろうとした(未遂)。
あてはめ
本件の強盗殺人は、あらかじめ凶器や遺棄場所を確保した上で、抵抗不能な状態に陥らせて殺害するという周到に準備された高度に計画的な犯行であり、殺意も極めて強固である。落ち度のない2名の生命を奪った結果は極めて重大であり、遺族の処罰感情も峻烈である。被告人が一部事実を認め、前科がないという宥恕すべき事情を考慮しても、犯行の計画性と残虐性、強盗の目的という動機の卑劣さに照らせば、刑事責任は極めて重いといえる。
事件番号: 昭和50(あ)2111 / 裁判年月日: 昭和53年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、別件の詐欺事実による逮捕・勾留であっても、直ちに捜査権の濫用として違法となるものではない。 第1 事案の概要:被告人は、詐欺の被疑事実によって逮捕・勾留された。しかし、弁護人はこの逮捕・勾留が実質的には本件(殺人事件等)の捜査を目的と…
結論
死刑制度は憲法36条に違反せず、本件の犯情に照らせば、第一審の死刑判決を維持した原判決は相当であり、死刑の科刑はやむを得ない。
実務上の射程
死刑選択の可否が争われる重大事案(特に被害者2名の強盗殺人)において、犯行の「計画性」と「殺意の強固さ」を重視して死刑を是認する際の規範的あてはめのモデルとなる。
事件番号: 平成8(あ)168 / 裁判年月日: 平成12年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、複数の殺人・強盗殺人事件において、動機・態様・結果の重大性等の諸事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合には、これを是認することができる。 第1 事案の概要:被告人は約6年半の間に、2件の殺人と2件の強盗殺人等を犯した。具体的には、店舗店番の女…
事件番号: 昭和62(あ)562 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打…
事件番号: 昭和41(あ)580 / 裁判年月日: 昭和42年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑を規定する刑法240条(強盗殺人罪)は憲法に違反せず、犯情に照らし極刑を選択することは許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人および死体遺棄の罪に問われた。第一審判決は被告人を死刑に処し、控訴審(原判決)もこれを支持した。被告人側は、死刑規定の違憲性、自白の任意性の欠如、および量刑不当…
事件番号: 平成8(あ)482 / 裁判年月日: 平成12年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて悪質かつ重大な結果を招いた強盗殺人等の事案において死刑を科すことは、諸般の事情を考慮しても是認される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀の上、一人暮らしの従弟(36歳)をビニールひもで緊縛・絞殺して権利証等を強取し、死体を海浜に遺棄した(…