一 違法な別件逮捕・勾留であるとの主張が欠前提とされた事例 二 死刑の合憲性 三 死刑事件
憲法31条,憲法33条,憲法34条,憲法36条
判旨
死刑制度は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、別件の詐欺事実による逮捕・勾留であっても、直ちに捜査権の濫用として違法となるものではない。
問題の所在(論点)
1. 詐欺事実による逮捕・勾留が捜査権の濫用として違法となるか。 2. 死刑制度は憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
1. 憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、その刑罰の火急、酷烈さが、人道上の見地から一般に許容されないものを指すが、死刑そのものはこれに該当しない(昭和23年3月12日大法廷判決踏襲)。 2. 別件による逮捕・勾留が捜査権の濫用として違法となるか否かは、当該逮捕・勾留が実質的に本件の取調べを目的とした不当なものであるか、手続の適正を著しく欠くか等の諸事情を総合して判断する。
重要事実
被告人は、詐欺の被疑事実によって逮捕・勾留された。しかし、弁護人はこの逮捕・勾留が実質的には本件(殺人事件等)の捜査を目的とした捜査権の濫用であり、憲法31条、33条、34条に違反する違法なものであると主張した。また、被告人の自白の任意性や、死刑判決が憲法36条の「残虐な刑罰」に当たるかどうかも争点となった。
あてはめ
1. 逮捕・勾留について、原審が詐欺被疑事実に基づく手続を捜査権の濫用ではないと判断したことは相当であり、憲法違反の前提を欠く。 2. 自白の任意性についても、原審の判断に不合理な点はなく、憲法38条違反は認められない。 3. 死刑制度については、過去の大法廷判決が示す通り、憲法36条に違反しないことが確立した判例であるため、違憲の主張は理由がない。
事件番号: 昭和62(あ)562 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打…
結論
本件逮捕・勾留は違法ではなく、自白の任意性も認められる。また、死刑制度は憲法36条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
別件逮捕・勾留の違法性については、実質的に余罪取調べを目的とした「脱法的な拘束」であるかが判断の分かれ目となる。答案上は、死刑の合憲性については判例があることに触れる程度で足りるが、別件逮捕については本判決を引用しつつ、実質的な捜査目的の偏重がないかを具体的枠組みに当てはめる必要がある。
事件番号: 昭和41(あ)580 / 裁判年月日: 昭和42年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑を規定する刑法240条(強盗殺人罪)は憲法に違反せず、犯情に照らし極刑を選択することは許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人および死体遺棄の罪に問われた。第一審判決は被告人を死刑に処し、控訴審(原判決)もこれを支持した。被告人側は、死刑規定の違憲性、自白の任意性の欠如、および量刑不当…
事件番号: 昭和55(あ)142 / 裁判年月日: 昭和56年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には該当せず、犯行の動機、計画性、手段の残虐さ、結果の重大性等を総合考慮して死刑を維持した原判決は相当である。 第1 事案の概要:被告人は、実姉と共謀し、保険金を目的として実母を殺害した。さらに、犯行を交通事故死に仮装して保険金を騙取した。その後、被告人の…
事件番号: 平成28(あ)543 / 裁判年月日: 平成30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、資産家夫妻を殺害・遺棄した強盗殺人等の事案において、周到な計画性、強固な殺意、結果の重大性を鑑みれば、前科がない等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、資産家夫妻の所持品を強奪するため、睡眠薬、ロープ、フック等を準備し、死体遺棄用…