一 死刑の合憲性 二 死刑事件 (愛媛の保険金目当て実母殺害等事件)
憲法13条,憲法31条,憲法36条
判旨
死刑制度は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には該当せず、犯行の動機、計画性、手段の残虐さ、結果の重大性等を総合考慮して死刑を維持した原判決は相当である。
問題の所在(論点)
死刑制度は憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」に当たるか。また、実母及び妻を殺害した本件において、被告人を死刑に処する量刑判断が妥当か。
規範
死刑が憲法36条にいう「残虐な刑罰」に該当しないことは、最高裁判所大法廷の判例(昭和23年3月12日判決等)により確立された解釈である。死刑の選択(量刑)に際しては、①犯行の動機、②計画性、③殺害の手段方法の残虐さ、④結果の重大性、⑤被告人の役割、⑥犯行後の情状等を総合的に勘案して判断する。
重要事実
被告人は、実姉と共謀し、保険金を目的として実母を殺害した。さらに、犯行を交通事故死に仮装して保険金を騙取した。その後、被告人の妻がこれらの事実を口外するのを防ぐため、被告人らは妻を絞殺した。第一審は実母殺害等の事実につき死刑を言い渡し、原審もこれを維持した。被告人側は、死刑は残虐な刑罰であり憲法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
まず、憲法36条違反の点については、既往の判例に基づき否定される。次に量刑について検討すると、本件は保険金目当てという利欲的な動機に基づき、実母及び口封じのための妻という親族2名を殺害したものであり、結果は極めて重大である。また、交通事故への仮装や絞殺という手段の残虐性、周到な計画性、共同正犯としての主導的役割、さらには犯行後の隠蔽工作という情状に鑑みれば、罪責は極めて重い。これらの諸要素を総合すれば、死刑の選択を維持した原判断は相当であるといえる。
事件番号: 昭和62(あ)246 / 裁判年月日: 平成4年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、殺害方法の残忍性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合的に考慮すべきであり、情状を酌量しても罪責が重大な場合には死刑が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため、同僚の妻Bから健康保険証を奪って金員を詐取しようと計…
結論
死刑制度は合憲であり、本件の犯行態様・結果の重大性に鑑みれば、死刑を選択した量刑判断に誤りはない。上告棄却。
実務上の射程
死刑の合憲性を確認するとともに、永山判決(最判昭58.7.8)に先立ち、死刑選択の際に考慮すべき具体的要素(動機、計画性、態様、結果等)を列挙した事例として、量刑論の起案において参考となる。
事件番号: 昭和50(あ)2111 / 裁判年月日: 昭和53年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、別件の詐欺事実による逮捕・勾留であっても、直ちに捜査権の濫用として違法となるものではない。 第1 事案の概要:被告人は、詐欺の被疑事実によって逮捕・勾留された。しかし、弁護人はこの逮捕・勾留が実質的には本件(殺人事件等)の捜査を目的と…
事件番号: 昭和44(あ)1212 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立て第一審判決の刑より重い刑の判決を求めることが憲法三九条に違反しないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の判示するとおりであり、検察官が死刑の判決を求める場合もその例外とは解されない。
事件番号: 昭和62(あ)562 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打…
事件番号: 昭和55(あ)914 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自…