平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙当時において,公職選挙法13条1項,別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず,上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (意見及び反対意見がある。)
衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める公職選挙法13条1項,別表第1の規定の合憲性
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法13条1項,公職選挙法別表第1
判旨
平成29年衆議院議員総選挙当時の小選挙区定数配分及び区割規定は、投票価値の平等を確保するための漸進的な是正措置が講じられていたことから、国会の裁量権の限界を超えたものとはいえず、憲法14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
本件衆議院議員小選挙区の定数配分規定及び区割規定(本件区割規定)は、投票価値の平等の要請(憲法14条1項等)に反し、国会の裁量権の限界を超えるものとして憲法に違反するか。
規範
1. 投票価値の平等は憲法上の要請であるが、具体的選挙制度の決定は国会の広範な裁量に委ねられる。 2. 議員1人当たりの人口の平等は最も重要かつ基本的な基準であるが、行政区画、地勢等の諸要素も合理性を有する限り考慮し得る。 3. 定数配分・区割規定が憲法上の要請に反し、裁量の限界を超えて是認できない場合に初めて憲法違反となる。 4. 憲法の要求に反する状態が生じても、合理的期間内に是正がなされない場合に限り違憲となる。
重要事実
平成29年(2017年)10月施行の衆議院総選挙につき、小選挙区の区割規定の合憲性が争われた。前回(平成26年)の選挙時、最高裁は「1人別枠方式」の影響が残るとして違憲状態と判示していた。これを受け国会は、将来的にアダムズ方式(人口比例性の高い配分方式)を導入することを決定し、その移行措置として、本件選挙までに定数を「0増6減」し、区割りを改訂した。その結果、本件選挙当日の最大格差は1対1.979となり、2倍を超える選挙区は存在しなくなった。
あてはめ
1. 本件区割規定は、累次の大法廷判決の趣旨に沿って、アダムズ方式の採用による較差縮小の安定化を図った上で、暫定措置として「0増6減」を実施し、最大格差を2倍未満に縮小させた。 2. これは投票価値の平等の要請に応えつつ、選挙制度の安定性も考慮した漸進的な是正措置として評価できる。 3. 旧来の1人別枠方式の影響が一部残存しているものの、アダムズ方式導入による完全解消に向けた立法措置が既に講じられている以上、裁量の合理性を失うものではない。 4. したがって、本件選挙当時において、新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたといえる。
結論
本件区割規定は、国会の裁量権の行使として合理性を有しており、憲法14条1項等に違反しない。
実務上の射程
衆議院選挙の較差是正プロセスにおける「漸次的な是正」を肯定した判例。最大格差が2倍を切った事実だけでなく、アダムズ方式採用という「仕組みの抜本的見直し」を評価している点が重要。今後の答案では、単なる数値(2倍)のみならず、国会による具体的な是正努力の「動態的評価」を重視すべきであることを示す。
事件番号: 平成27(行ツ)254 / 裁判年月日: 平成27年11月19日 / 結論: 棄却
衆議院比例代表選出議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定める公職選挙法13条2項,別表第2の規定は,平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙当時,憲法14条1項等に違反していたものとはいえない。