公立高等学校の教職員が卒業式又は入学式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に違反したことを理由として,教育委員会が再任用職員等の採用候補者選考において上記教職員を不合格とし,又はその合格を取り消したことは,次の(1)~(4)など判示の事情の下においては,裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえない。 (1) 上記不合格等の当時,再任用職員等として採用されることを希望する者が原則として全員採用されるという運用が確立していたとはいえない。 (2) 上記職務命令は,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであった。 (3) 上記教職員の上記職務命令に違反する行為は,式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらし,式典に参列する生徒への影響も伴うものであった。 (4) 上記教職員が上記職務命令に違反してから上記不合格等までの期間は長期に及んでいない。
公立高等学校の教職員が卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を命ずる旨の職務命令に違反したことを理由として,教育委員会が再任用職員等の選考において上記教職員を不合格としたこと等が,裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとされた事例
地方公務員法28条の4,地方公務員法28条の5
判旨
再任用職員等の採用候補者選考において、職務命令違反を不利益に考慮し不合格とすることは、任命権者の広範な裁量権の範囲内にあり、著しく合理性を欠かない限り違法とはならない。
問題の所在(論点)
再任用職員等の採用候補者選考における合否判断について、任命権者(都教委)にどの程度の裁量権が認められるか。また、過去の職務命令違反を重視して不合格とすることが裁量権の逸脱・濫用(国家賠償法1条1項)に当たるか。
規範
再任用制度等は定年退職者等を新たに採用するものであり、任命権者は採用の合否や勤務成績の評価について、基本的に広範な裁量権を有する。再任用制度が雇用確保の目的を含むとしても、教育行政等の効率的運営という目的も併せ持つ以上、その裁量権が大きく制約されるものではない。したがって、選考の判断が著しく合理性を欠き、客観的合理性や社会的相当性を欠くと認められる場合に限り、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
事件番号: 平成22(行ツ)54 / 裁判年月日: 平成23年5月30日 / 結論: 棄却
公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,当該教諭の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するということはできない。 (1) 上記の起立斉唱行為は,学校の儀式的行事における慣例上の儀礼的な所作…
重要事実
東京都立高校の教職員であった被上告人らは、卒業式等での国歌斉唱時に起立しなかった。これが、学習指導要領等に基づく職務命令に違反するとして戒告等の懲戒処分を受けた。その後、被上告人らは再任用職員等の採用選考に申し込んだが、東京都教育委員会(都教委)は、当該職務命令違反を「重大な非違行為」と評価し、勤務成績が良好でないことを理由に不合格または合格取消し(本件不合格等)とした。
あてはめ
本件職務命令は、式典の秩序確保や円滑な進行を図るものであり、遵守の必要性が高い。被上告人らの違反行為は式典の秩序を損ない、生徒への影響も否定できない。また、違反から選考までの期間が短く、再採用後も同様の非違行為に及ぶおそれを否定し難いとみることも不合理ではない。これらに鑑みれば、都教委が他の個別事情にかかわらず職務命令違反を特に重視すべき要素として評価し、不合格の判断をしたことが、当時の制度下で著しく合理性を欠くとはいえない。
結論
本件不合格等は都教委の裁量権の範囲内であり、違法ではない。したがって、国家賠償請求は棄却される。
実務上の射程
行政庁の裁量権が広い「新規採用(再採用)」の場面における判断枠組みを示す。先行する判例(最判平24.1.16等)が懲戒処分(減給以上)については慎重な判断を求めたのに対し、本判決は再任用選考においては、戒告程度の違反歴であっても不採用の決定的な理由とすることに広い裁量を認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 平成17(受)530 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 棄却
1 静岡県公文書の開示に関する条例(平成元年静岡県条例第15号。平成12年静岡県条例第58号による全部改正前のもの)に基づき開示請求がされた公文書に記載された情報が虚偽であった場合において,同条例には開示請求に係る公文書の記載内容の真否を調査すべき旨の定めはなく,かえって,公文書の開示の可否は原則として開示請求書を受理…
事件番号: 平成23(行ツ)263等 / 裁判年月日: 平成24年1月16日 / 結論: その他
1 公立の高等学校又は養護学校の教職員が,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又は国歌のピアノ伴奏を行うことを命ずる旨の校長の職務命令に従わず起立しなかったこと又は伴奏を拒否したことを理由に,教育委員会から戒告処分を受けた場合において,上記不起立又は伴奏拒否が当該教職員の歴史観ないし世…