国立大学の医学部の科目の試験について、受験を申請したのち正当な事由なくして試験期日に欠席した学生は、同一学年中その科目の試験を受けることができず、特別の事情のあるときに限り、教授会ないし科目担当教官から再試験の受験を許可されることがあるものと学則等により定められていたなど原判示の事実関係のもとにおいて、同大学の法医学の担当教官が同科目の試験を受けず、かつ、他の学生らの受験の妨害等をした学生のうち、右妨害等につき謝罪文を提出しなかつた者に対して再試験の受験の許可を与えなかつたことは、右担当教官の裁量の範囲内の教育上の措置であつて、不当な差別ないし懲戒処分又はこれに準ずるものにあたるとはいえない。
国立大学の医学部学生に対する科目の再試験の受験の不許可が不当な差別ないし懲戒処分又はこれに準ずるものにあたらないとされた事例
学校教育法11条,学校教育法施行規則13条,大学設置基準33条
判旨
大学における再試験の受験許否は、担当教官等の教育的見地からする裁量に委ねられた教育上の措置である。事態の真相を告白し陳謝する程度の謝罪文提出を再試験の条件とすることは、憲法19条に違反せず、裁量権の範囲内である。
問題の所在(論点)
大学における再試験の受験許可が教官の裁量に属するか、また、再試験の条件として謝罪文の提出を求めることが思想・良心の自由(憲法19条)を侵害し、裁量権の逸脱・濫用(不当な差別)にあたらないか。
規範
大学における試験制度(再試験を含む)の運用は、特段の事情がない限り、教育的見地からする担当教官等の裁量に委ねられた教育上の措置と解される。また、謝罪文の提出要求が、単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであるならば、個人の思想・良心の自由(憲法19条)を侵害するものではない。
重要事実
D大学医学部の学生であった上告人らは、正当な事由なく科目試験を欠席した。学則上、欠席者は原則として同一学年中に再試験を受けられないが、特別の事情がある場合に限り許可され得るとされていた。法医学担当教官は、試験妨害等について謝罪文を提出した学生には再試験を許可したが、提出を拒否した上告人らには許可を与えなかった。上告人らは、この措置が不当な差別であり、かつ謝罪文の要求が憲法19条に反すると主張した。
事件番号: 昭和31(オ)296 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大学による学生への停学処分は、教育的見地から学内の秩序維持のために行われる内部的措置であり、その有効性判定において裁量権行使の当不当を論ずることは、特段の事情がない限り司法審査の対象外である。 第1 事案の概要:私立大学の学生である上告人は、試験中に教科書を膝の上に広げて見るという不正行為を二度に…
あてはめ
本件再試験の許否は学則上、教育的見地に基づく判断が予定されており、担当教官の裁量に委ねられた教育上の措置といえる。次に、要求された謝罪文の内容は、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものであり、特定の思想を強制するものではない。したがって、謝罪文を提出した者のみを許可し、提出しない者を不許可としたことは、不当な差別や懲戒処分にはあたらず、裁量の範囲内の適切な措置であると判断される。
結論
本件措置は教官の裁量権の範囲内であり適法である。また、謝罪文の要求は憲法19条に違反しない。
実務上の射程
「部分社会の法理」が背景にあるが、本判決は特に教育現場における教官の「教育的裁量」を広く認める文脈で活用される。憲法19条との関係では、謝罪文の内容が「事態の真相告白・陳謝」程度であれば許容されるという限界を示している。答案上は、大学の内部事項に対する司法審査の密度や、裁量権の逸脱・濫用の有無を検討する際の根拠として引用すべきである。
事件番号: 平成6(オ)1119 / 裁判年月日: 平成9年8月29日 / 結論: その他
一 教科用図書の検定に当たり文部大臣が原稿記述に訂正、削除又は追加などの措置をした方が教科用図書としてより良くなるものとして指摘する改善意見は、これに応ずることを合格の条件とはせず、文部大臣の助言、指導の性質を有するものであって、これを付することは、教科用図書の執筆者又は出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなる…
事件番号: 昭和39(テ)35 / 裁判年月日: 昭和41年4月21日 / 結論: 棄却
一 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、憲法第一九条に違反しないことは当裁判所の大法廷の判決(昭和二八年(オ)第一二四一号同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁参照)の示すところであり、右のごとき判決が憲法第二一条第一項…