判旨
大学による学生への停学処分は、教育的見地から学内の秩序維持のために行われる内部的措置であり、その有効性判定において裁量権行使の当不当を論ずることは、特段の事情がない限り司法審査の対象外である。
問題の所在(論点)
大学が学生に対して行った停学処分の有効性を争う訴訟において、裁判所が懲戒権者の裁量権行使の当不当(妥当性)を審査することができるか。
規範
大学は学問の自由や大学の自治に基づき、学生の懲戒について広範な裁量権を有する。したがって、懲戒処分の有効性を判定するにあたり、裁量権行使の当不当(妥当性)を論ずることは、裁判所が処分権者の裁量権を侵害することになり、特段の事情がない限り法的な有効無効の判断には関係しない。
重要事実
私立大学の学生である上告人は、試験中に教科書を膝の上に広げて見るという不正行為を二度にわたり繰り返した。大学側はこれに対し、新制学部の学生としての地位に基づき1ヶ月の停学処分を課した。上告人は、同時に在籍していた旧制学部の授業・受験も禁止されたことや、処分の重さが裁量権を逸脱している等と主張し、処分の無効を訴えた。
あてはめ
上告人は試験監督の注意を無視して二度も教科書を見るという明確な不正行為を行っており、停学処分の原因事由は十分に存在する。処分は特定の学部の学生としての地位に対してなされたが、大学全体の営造物利用を禁止する停学の性質上、他学部での修学が制限されるのは当然の結果である。本件処分の有効性判定において、その処分の内容が教育的見地から見て当か不当かを司法が論ずることは、処分の効力そのものを左右するものではない。
結論
大学による停学処分は適法であり、裁量権行使の当不当を理由にその効力を否定することはできない。上告を棄却する。
実務上の射程
部分社会の法理(昭和52年富山大学事件等)が確立する前の判例であるが、大学の裁量権を尊重し、司法審査の範囲を限定する姿勢を示す。答案上は、私立大学の懲戒処分において「教育的配慮に基づく裁量」を強調する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和56(オ)385 / 裁判年月日: 昭和59年11月1日 / 結論: 棄却
国立大学の医学部の科目の試験について、受験を申請したのち正当な事由なくして試験期日に欠席した学生は、同一学年中その科目の試験を受けることができず、特別の事情のあるときに限り、教授会ないし科目担当教官から再試験の受験を許可されることがあるものと学則等により定められていたなど原判示の事実関係のもとにおいて、同大学の法医学の…