一 公立大学の学長がその学生に退学を命ずる行為は、行政事件訴訟特例法第一条にいう行政処分に当る。 二 公立大学学生の行為に対し、懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは、この点の判断が社会観念上著しく妥当を欠くものと認められる場合を除き、原則として、懲戒権者としての学長の裁量に任されるが、懲戒処分が全く事実の基礎を欠くものであるかどうかの点は、裁判所の判断に服する。
一 公立大学学生の退学処分の性格 二 公立大学学生の懲戒処分と裁判権のおよぶ範囲
行政事件訴訟特例法1条,学校教育法11条,学校教育法施行規則13条
判旨
公立大学の学生に対する退学処分は、一般市民としての公の施設の利用関係から排除する性質を有するため行政処分に当たり、その適否は学長の合理的な裁量に委ねられるが、事実の基礎を欠く場合は裁判所の審理の対象となる。
問題の所在(論点)
公立大学における学生への退学処分の法的性質(行政処分性)、および当該処分に対する司法審査の範囲と裁量の限界が問題となる。
規範
公立大学の学生に対する退学処分は、行政庁としての学長の処分(行政処分)に当たる。懲戒処分の発動および態様の選択は、教育的見地からの高度な専門的判断を要するため、学長の裁量に任されている。したがって、当該判断が「社会観念上著しく妥当を欠く」と認められる場合を除き、原則としてその裁量は尊重される。ただし、処分が全く事実の基礎を欠く場合には、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる。
重要事実
公立大学の学生であった上告人に対し、大学側が懲戒として退学処分を課した事案。上告人は、当該処分の前提となった事実関係に誤りがあり、処分が違法であるとしてその取消しを求めて提訴した。原審は、当該退学処分を行政処分と認めた上で、処分が全く事実の基礎を欠くものであるとして、これを違法と判断した。これに対し、大学側(処分権者)が上告した。
あてはめ
国立・公立学校は公の教育施設として一般市民の利用に供されるものであるから、その利用関係を消滅させる退学処分は私立大学の場合と異なり行政処分に該当する。また、教育目的達成のための懲戒は学内の事情に通じた者の裁量に委ねるべきであるが、その前提となる「事実の存否」については客観的な確定が可能である。本件において、原審が認定した通り、退学処分が全く事実上の根拠に基づかず、真実の基礎を欠くものであった以上、それは裁量の範囲内とはいえず、裁判所の審判権に服する違法な処分と評価される。
結論
公立大学の退学処分は行政処分であり、裁量権の行使が社会観念上著しく妥当を欠く場合や、処分の前提となる事実関係に基礎を欠く場合は、違法として裁判所により取り消される。
実務上の射程
部分社会の法理が妥当する領域であっても、一般市民としての法的地位(公の施設の利用権)を喪失させる処分については、行政処分性を認め司法審査を及ぼすという構成をとる際に必須の判例である。答案上は、まず処分性を肯定した上で、裁量審査の枠組み(事実誤認または社会観念上の著しい妥当性の欠如)として引用する。
事件番号: 昭和34(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】大学による学生への懲戒処分(退学処分)は、学長等の合理的な裁量に委ねられており、その処分が社会観念上著しく妥当を欠くと認められない限り、適法である。 第1 事案の概要:私立大学の学生である上告人が、試験において下敷きに鉛筆で書かれた内容を答案用紙に書き写すという不正行為(カンニング)を行った。大学…