受刑者の改善、更生という懲役刑の目的が阻害されることを理由として、現在の監獄の管理体制の糾弾を主たる目的とする図書の受刑者の閲読を不許可とする処分は、憲法一三条、一九条、二一条に違反しない。
受刑者の図書の閲読を不許可とする処分が憲法一三条、一九条、二一条に違反しないとされた事例
監獄法31条,監獄法施行規則86条1項,憲法13条,憲法19条,憲法21条
判旨
受刑者の文書閲読制限は、監獄内の規律及び秩序の維持、並びに受刑者の改善・更生という懲役刑の目的を阻害するおそれがある場合には、憲法13条、19条、21条に違反せず適法である。
問題の所在(論点)
受刑者に対する文書の閲読制限処分が、憲法13条(幸福追求権)、19条(思想・良心の自由)、21条(表現の自由・知る権利)に違反し、違法なものといえるか。
規範
受刑者の自由に対する制限が許されるためには、監獄内の規律及び秩序の維持に障害が生ずるおそれがある場合、または受刑者の改善、更生という懲役刑の目的を阻害するおそれがある場合に限られ、その制限は必要最小限度のものでなければならない(よど号ハイジャック事件大法廷判決の趣旨)。
重要事実
受刑者である上告人が、特定の文書の閲読を希望したが、監獄当局は当該文書の内容が監獄内の規律及び秩序維持に障害を生じさせ、かつ受刑者の改善、更生という懲役刑の目的を阻害するおそれがあるとして、閲読を不許可とする処分を行った。
あてはめ
本件処分は、監獄内の規律・秩序維持への障害、および受刑者の改善・更生という懲役刑の目的阻害という正当な目的のためになされた。原審が認定した証拠関係に基づけば、当該文書の閲読がこれらの目的を具体的に阻害するおそれがあると判断されるため、憲法各条項が保障する自由を侵害する不当な制限とはいえず、裁量権の範囲内として是認される。
結論
本件処分は憲法13条、19条、21条に違反せず、適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
よど号事件大法廷判決(昭和58年)の枠組みを受刑者の文書閲読制限にも適用した事例である。答案作成上は、単なる秩序維持だけでなく『改善・更生という懲役刑の目的』も正当な制限事由として明記する際に有用である。
事件番号: 平成5(オ)2005 / 裁判年月日: 平成10年4月24日 / 結論: 棄却
監獄内の規律及び秩序の維持に障害を生ずること並びに受刑者の教化を妨げることを理由とする受刑者の受信した信書及び発信した信書の一部抹消は、憲法二一条に違反しない。
事件番号: 平成5(行ツ)178 / 裁判年月日: 平成6年10月27日 / 結論: 棄却
在監者の信書の発受に関する制限を定めた監獄法五〇条、監獄法施行規則一三〇条の規定は、憲法二一条に違反しない。