監獄内の規律及び秩序の維持に障害を生ずること並びに受刑者の教化を妨げることを理由とする受刑者の受信した信書及び発信した信書の一部抹消は、憲法二一条に違反しない。
受刑者の受信した信書及び発信した信書の一部抹消と憲法二一条
憲法21条,監獄法50条,監獄法施行規則129条の2第1項,監獄法施行規則130条
判旨
監獄内の規律維持や受刑者の教化を目的とする信書・新聞記事の一部抹消は、憲法21条に違反せず、監獄法の規定(当時)に基づく適法な制限である。
問題の所在(論点)
監獄当局による信書・新聞記事の一部抹消、独居拘禁、および懲罰の賦課が、表現の自由(21条)や適正手続(31条)を侵害し、違法なものといえるか。
規範
在監者の表現の自由(憲法21条1項)は、監獄内の規律及び秩序の維持という公の利益のために、必要かつ合理的な範囲で制限を受ける。具体的には、監獄内の規律及び秩序の維持に障害を生ずる相当の蓋然性が認められる場合、または受刑者の教化を妨げる特段の事情がある場合に、その制限が許容される。
重要事実
上告人(受刑者)に対し、監獄当局が以下の措置を講じた。(1)監獄内の規律・秩序の維持および教化の妨げを理由とした、新聞記事、機関紙、受信信書、発信信書の一部抹消。(2)接見拒否、厳正独居拘禁、および懲罰としての軽屏禁・文書図画閲覧禁止。上告人は、これらが憲法21条、31条等に違反するとして、国家賠償を求めた。
あてはめ
(1)信書・記事等の抹消について:監獄内の規律及び秩序の維持、並びに受刑者の教化を妨げることを理由とする抹消は、よって立つ事実関係に照らせば、監獄法の趣旨に沿う必要かつ合理的な制限であり、憲法21条に違反しない。(2)独居拘禁について:厳正独居拘禁は、自由刑とは異なる身体罰や精神罰を伴う特別な不利益処分には当たらないため、これを維持・更新した判断に違法はない。(3)懲罰について:監獄法が違反行為を具体的に定めていない点も憲法31条に違反せず、事実関係に基づき行われた懲罰(軽屏禁等)は適法である。
結論
本件における各接見拒否、厳正独居拘禁、懲罰、および信書等の抹消はいずれも違法とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
特別権力関係的理論が後退した後の判例であり、在監者の権利制限に関する「相当の蓋然性」基準(よど号記事抹消事件等)を再確認するもの。答案上は、制限の目的(秩序維持・教化)と手段の必要最小限性を検討する際の規範として用いる。
事件番号: 平成3(オ)803 / 裁判年月日: 平成5年9月10日 / 結論: 棄却
在監者に対する五〇日の軽屏禁等の懲罰処分は、憲法三一条に違反しない。
事件番号: 平成5(行ツ)178 / 裁判年月日: 平成6年10月27日 / 結論: 棄却
在監者の信書の発受に関する制限を定めた監獄法五〇条、監獄法施行規則一三〇条の規定は、憲法二一条に違反しない。