在監者に対する五〇日の軽屏禁等の懲罰処分は、憲法三一条に違反しない。
在監者に対する五〇日の軽屏禁等の懲罰処分と憲法三一条
監獄法60条,憲法31条
判旨
未決拘禁者に対する文書等閲読禁止の懲罰処分が、訴訟活動に必要な場合に執行停止される運用であれば、刑事被告人としての権利(憲法32条、37条)を侵害せず、憲法31条にも違反しない。
問題の所在(論点)
未決拘禁者に対する文書等閲読禁止の懲罰処分が、適正手続(憲法31条)ならびに裁判を受ける権利(32条)および刑事被告人の防御権(37条)を侵害し違憲・違法となるか。
規範
懲罰処分の適法性については、監獄内の規律維持という行政目的の合理性と、制限される権利の性質・程度を相関的に考慮する。特に適正手続(憲法31条)については大法廷判決の趣旨(成田新法事件等)を援用し、刑事被告人としての防御権(32条、37条)との関係では、実際の訴訟活動への支障の有無により判断する。
重要事実
未決拘禁者である上告人に対し、監獄内の規律違反を理由に文書等の閲読を禁止する懲罰処分がなされた。上告人は、この処分が防御権を奪い憲法31条、32条、37条に違反すると主張したが、本件監獄では訴訟活動のために必要がある場合には、上告人の要求に応じて処分の執行が停止される運用が採られていた。
あてはめ
まず憲法31条について、本件懲罰処分は先例の趣旨に徴して適正手続に反しない。次に、憲法32条・37条の侵害について検討するに、本件処分は文書閲読を禁ずるものであるが、訴訟活動に支障が生じる場合には上告人の要求により執行が停止されていた。そうであれば、刑事被告人としての防御活動が実質的に妨げられたとはいえず、権利侵害の前提を欠くというべきである。
結論
本件懲罰処分は憲法31条、32条、37条のいずれにも違反せず、適法である。
実務上の射程
監獄(拘置所)内の規律維持のための懲罰において、訴訟活動との調整が図られている場合には、防御権侵害を理由とする違憲主張を排斥する根拠として活用できる。特に「執行停止の運用」の有無が判断の分水嶺となる。
事件番号: 平成5(オ)2005 / 裁判年月日: 平成10年4月24日 / 結論: 棄却
監獄内の規律及び秩序の維持に障害を生ずること並びに受刑者の教化を妨げることを理由とする受刑者の受信した信書及び発信した信書の一部抹消は、憲法二一条に違反しない。
事件番号: 平成5(行ツ)178 / 裁判年月日: 平成6年10月27日 / 結論: 棄却
在監者の信書の発受に関する制限を定めた監獄法五〇条、監獄法施行規則一三〇条の規定は、憲法二一条に違反しない。
事件番号: 平成10(オ)528 / 裁判年月日: 平成12年9月7日 / 結論: 棄却
監獄法施行規則一二一条本文、一二七条一項本文は、憲法一三条、三二条に違反しない。