一 新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、憲法第一九条に違反しないことは当裁判所の大法廷の判決(昭和二八年(オ)第一二四一号同三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁参照)の示すところであり、右のごとき判決が憲法第二一条第一項に違反しないことは、右判決の趣旨に徴して明らかである(注、本件は新聞紙の発行人に対するものを含み、代替執行できない点が前記大法廷判決と異なることに留意のこと)。 二 (意見がある。)
新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決の合憲性
民法723条,憲法19条,憲法21条1項
判旨
名誉毀損に対する謝罪広告の掲載命令が、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものに留まる場合は、憲法19条(思想・良心の自由)および同21条(表現の自由)に違反しない。
問題の所在(論点)
名誉毀損の救済手段として裁判所が命じる謝罪広告(民法723条)の内容が、特定の思想や信条の表明を強いる場合に、憲法19条の「良心の自由」や同21条1項の「表現の自由」を侵害しないかが問題となる。
規範
謝罪広告の掲載を命ずる判決は、その内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあっては、憲法19条の保障する良心の自由を侵害せず、また憲法21条1項の表現の自由にも違反しない。
重要事実
上告人らは、新聞紙上において「町を毒すE暴政、与野党問わずヒモつき」と題する記事を掲載し、被上告人の名誉を毀損した。これに対し、被上告人は民法723条に基づき、上告人らに対し「貴下及び親族友人等に多大の迷惑を及ぼしたことを謝罪する」という内容の謝罪広告を新聞に掲載することを求めて提訴した。
あてはめ
本件における謝罪広告の内容は、「多大の迷惑を及ぼしたことを謝罪する」というものであり、客観的な事実関係の告白と、それに対する陳謝の意思表明に限定されている。このような内容は、個人の内心における倫理的・道徳的な判断や価値体系を根底から否定したり、特定の思想を強制したりする性質のものではない。したがって、事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度の広告であれば、憲法が保障する良心の自由や表現の自由を不当に制約するものではないといえる。
結論
本件の謝罪広告掲載命令は、憲法19条および21条1項に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
民法723条に基づく謝罪広告命令の合憲性に関するリーディングケースである。答案上は、命令内容が『単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度』を超え、屈辱的・苦役的な内容に至る場合には違憲となる可能性がある点に注意して記述すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)573 / 裁判年月日: 昭和35年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法35条2項は、捜索と押収について各別の許可が記載されていれば足り、これらを一通の令状に記載することを妨げない。また、差押えるべき物の表示が「被疑者七名の不法出国に関する文書物件の一切」と記載されている令状は、一般令状には当たらず適法である。 第1 事案の概要:上告会社に対し、被疑者7名の不法出…