他人の名誉を毀損する記事を新聞紙に掲載し、これを頒布して他賃の名誉を毀損することは、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものと認めることができない
名誉毀損と権法第二一条
刑法230条1項,憲法21条
判旨
憲法21条は言論の自由を無制限に保障するものではなく、新聞記事の掲載・頒布によって他人の名誉を毀損する行為は、言論の自由の乱用として同条の保障範囲外となる。
問題の所在(論点)
新聞記事の掲載・頒布による名誉毀損行為を処罰することが、憲法21条の保障する言論の自由に反しないか。
規範
憲法21条が保障する言論の自由は無制限なものではない。他人の名誉を毀損する言論活動は、言論の自由の乱用にあたり、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものとは認められない。
重要事実
被告人は、新聞紙上に特定の記事を掲載し、これを頒布した。当該記事の内容は他人の名誉を毀損するものであった。被告人は、名誉毀損罪(刑法230条1項)等に問われ、有罪判決を受けた第一審および原判決に対し、憲法21条違反等を理由に上告した。
あてはめ
被告人が行った記事の掲載および頒布は、他人の名誉を毀損する性質のものである。このような他人の名誉という他者の人権を侵害する態様の言論活動は、公共の福祉による制限の範疇にあり、言論の自由の乱用と評価される。したがって、当該行為に対して法的責任を問うことは、憲法21条が許容する範囲内の制限である。
結論
本件記事の掲載・頒布による名誉毀損は、憲法21条の保障の範囲外であり、違憲とはいえない。上告棄却。
実務上の射程
名誉毀損罪の合憲性を端的に示した初期の判例である。答案上は、表現の自由の限界(公共の福祉)を論じる際の根拠として引用できるが、後に示された「夕刊和歌山時事事件」や「刑法230条の2」の法理(真実性の証明による免責)と併せて論じる必要がある。
事件番号: 昭和36(あ)722 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
他人の名誉を毀損する記事を新聞紙に掲載し、これを頒布して他人の名誉を毀損することは、言論の自由の乱用であつて、憲法二一条の保障する言論の自由の範囲内に属するものと認めることのできないことは、当裁判所の判例とするところである。(昭和三一年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八五頁及び同三三年四月一〇日第一小法廷判決、刑集…