国会通信、自民党通信、株主通信等の新聞、パンフレツト等を編集、発行している者が、同紙上に確実な根拠もないのに、A電力株式会社の役員甲、乙がその職務に関し、業者丙から賄賂を収受した旨の記事を掲載し、これを一般多数人に頒布して甲、乙、丙の名誉を毀損した事実について、名誉毀損罪の成立を是認した判決が、憲法第二一条に違反するといえないことは、当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第一二四一号同三一年七月四日大法廷判決・民集一〇巻七号七八五頁)の趣旨に照らし明らかである。
名誉毀損罪の成立を認めたことが憲法第二一条に違反しないとされた事例
憲法21条,刑法230条1項,刑法230条ノ2
判旨
名誉毀損罪において真実性の証明がなされない場合でも、表現の自由の観点から直ちに有罪とはならず、被害者の社会的属性による被害程度の差を考慮することは法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
1. 刑法230条の2第1項における真実性の証明の程度および誤信の取り扱い。2. 被害者の社会的身分を考慮して被害程度を判断することが法の下の平等に反するか。
規範
刑法230条の2に基づく事実の真否の判断において、厳格な証明を要するかという点や、真実と誤信した場合の過失の有無が問われるが、表現の自由(憲法21条)との調整を図るべきである。また、被害者の社会的身分によって名誉毀損による被害の程度に差異が生じることを考慮することは、合理的区別の範囲内であり憲法14条に違反しない。
重要事実
被告人らが、告訴人らの名誉を毀損する内容を報道したとして名誉毀損罪で起訴された。被告人側は、真実性の証明について「自由な証明」や「証拠の優越」で足りると主張し、また、被害者の社会的身分によって保護の程度に差を設けることは憲法14条に違反するなどと主張して上告した。
あてはめ
本件では、真実性の証明に関する具体的な法解釈(誤信に相当理由がある場合の免責等)を確定せずとも、被告人の罪責は免れ得ないと判断された。憲法21条との関係については、名誉の保護と報道の自由の比較衡量において、原判決が報道の自由を不当に軽視したとは認められない。憲法14条については、被害者の属性により名誉侵害の客観的な被害程度が異なるという事実を指摘したに過ぎず、身分による差別を容認したものではない。
結論
本件報道が名誉毀損罪の成立要件を満たし、違法性阻却事由が存在しないとした原判決に憲法違反や判例違反の誤りはないため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決自体は手続き的な判断に留まる面があるが、後の「夕刊和歌山時事事件(最判昭44.6.25)」における「真実と誤信したことに相当の理由がある場合の免責」という規範を導く前段階の判断として位置づけられる。答案上は、被害者の社会的地位が損害(被害程度)の評価に影響し得る点を確認する際に参照し得る。
事件番号: 昭和31(あ)3359 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
他人の名誉を毀損する記事を新聞紙に掲載し、これを頒布して他賃の名誉を毀損することは、憲法の保障する言論の自由の範囲内に属するものと認めることができない