愛知県議会議長の同県議会議員に対する発言の取消命令の適否は,司法審査の対象とはならない。
愛知県議会議長の同県議会議員に対する発言の取消命令と司法審査
裁判所法3条1項,地方自治法104条,地方自治法120条,地方自治法123条1項,地方自治法129条1項,愛知県議会会議規則(昭和31年10月20日愛知県議会規則)121条2項,愛知県議会会議規則(昭和31年10月20日愛知県議会規則)122条,愛知県議会会議規則(昭和31年10月20日愛知県議会規則)123条
判旨
普通地方公共団体の議会議長が、地方自治法129条1項に基づき議員に対して行う発言取消命令の適否は、司法審査の対象とならない。
問題の所在(論点)
議長による議員への発言取消命令が、一般市民法秩序と直接の関係を有する事項として、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に該当し司法審査の対象となるか。
規範
裁判所法3条1項にいう一切の法律上の争訟には、自律的な法規範を有する団体の内部規律の問題として、自治的措置に任せるのが適当なものが含まれる。普通地方公共団体の議会における法律上の係争については、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、議会の自主的、自律的な解決に委ねるべきであり、司法審査の対象とならない。
重要事実
愛知県議会議員である被上告人が、一般質問において知事に対し事実誤認等を含む不穏当な発言をした。これに対し県議会議長は、地方自治法129条1項に基づき発言の一部を取り消すよう命じた(本件命令)。愛知県議会会議規則では、議長が取消しを命じた発言は配布用会議録やウェブサイトの会議録等に掲載しないこととされていたため、被上告人の発言はこれらから削除された。被上告人は、発言が配布用会議録に記載される権利は重要な権利であり、本件命令はその権利を制限するものであるとして、命令の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
地方自治法104条、129条1項は、議長に秩序保持権や発言取消命令権を認めており、議会が発言をめぐる秩序維持等の係争を自律的に解決することを前提としている。本件規則において、取消命令を受けた発言を配布用会議録に掲載しないとする規定は、上記法の権限を前提に会議録調製等の具体的規律を定めたにすぎない。したがって、議員に対し「発言が配布用会議録に記載される権利利益」を付与したとはいえず、配布用会議録に掲載されないことをもって、一般市民法秩序と直接の関係を有すると認めることはできない。ゆえに、本件命令の適否は内部的な問題にとどまると解される。
結論
本件命令の適否は司法審査の対象とならず、本件訴えは不適法である(却下すべき)。
実務上の射程
地方議会の自律的権能を尊重し、議員の身分喪失(除名)に至らない程度の内部規律の行使については、原則として司法審査が及ばないとする従来の判例(部分社会の法理)の枠組みを維持・適用したものである。
事件番号: 昭和26(オ)23 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方議会議員の除名議決は、議員の地位を失わせる法的効果を持つ一種の行政処分であり、裁判所の司法審査の対象となる。議員の発言が地方自治法132条の「無礼の言葉」に該当するか否かは、議会の裁量に属する事柄ではなく、裁判所が客観的に判断すべき法律問題である。 第1 事案の概要:市議会議員(被上告人)が議…
事件番号: 平成30(行ヒ)417 / 裁判年月日: 令和2年11月25日 / 結論: 棄却
普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は,司法審査の対象となる。 (補足意見がある。)