判旨
地方議会議員の除名議決は、議員の地位を失わせる法的効果を持つ一種の行政処分であり、裁判所の司法審査の対象となる。議員の発言が地方自治法132条の「無礼の言葉」に該当するか否かは、議会の裁量に属する事柄ではなく、裁判所が客観的に判断すべき法律問題である。
問題の所在(論点)
1. 地方議会議員に対する除名議決は、行政訴訟の対象となる「行政処分」にあたるか。 2. 議員の発言が「無礼の言葉」(地方自治法132条)に該当するかどうかの判断について、議会に裁量が認められるか(司法審査の範囲)。
規範
地方議会による議員の除名議決は、執行機関の処分を待たず直ちに議員の地位を失わせる法律効果を生じさせるため、一種の行政処分にあたる。また、地方自治法132条の「無礼の言葉」への該当性は法律解釈の問題であって、裁判所は議会の主観的判断に拘束されず、客観的にこれを判断すべきである。したがって、懲罰の種類選択が議会の自由裁量に属するとはいえず、前提となる要件解釈を誤った除名議決は違法となる。
重要事実
市議会議員(被上告人)が議場において発言した内容が、地方自治法132条に規定される「無礼の言葉」に該当するとして、市議会(上告人)が当該議員を除名する懲罰議決を行った。これに対し、議員側が当該議決は違法であるとして取消しを求めて提訴した事案である。上告人(議会側)は、懲罰の判断は議会の裁量に属し司法審査に馴染まないと主張した。
あてはめ
除名議決は議員の身分を剥奪する重大な法的効果を持つため、行政処分として司法審査の対象となる。あてはめにおいて、本件議員の発言が「無礼の言葉」に該当するかは客観的な法律解釈の問題である。議場外の行為に反省すべき点があるとしても、それを議場内の発言に結びつけて「無礼」と解することは当を得ない。また、当該用語の解釈にあたっては社交上の儀礼を標準とすべきではなく、議員の発言としての必要性を考慮すべきであるが、本件議決はこれらの解釈を誤り、前提を欠く違法なものであると解される。
結論
本件除名議決は、地方自治法132条の解釈を誤った違法な処分であり、その取消請求を認めた原判決は正当である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
地方議員の除名については、いわゆる「部分社会の法理」の例外として司法審査が及ぶことを示した重要判例である(後の最大判昭35.10.19参照)。答案上は、議会の自律権と司法審査の関係が問題となる場面で、除名が「議員の身分の喪失」という重大な権利侵害を伴うことを理由に処分性を肯定し、かつ「無礼の言葉」という要件認定が裁判所の審理に適う法律問題であることを論じる際に活用する。
事件番号: 昭和33(オ)852 / 裁判年月日: 昭和34年2月19日 / 結論: 破棄自判
町議会議員の議会における発言の内容が、議会に対する協力の態度を欠き不徳の誹を免れない場合でも、原判決認定程度の発言を理由にその議員を除名することは違法である。
事件番号: 昭和25(オ)200 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
昭和二三年法律第一七九号(地方自治法の一部を改正する法律)附則第二条第五項の都道府県議会の議決の取消を求める訴は不敵法である。
事件番号: 昭和28(オ)425 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
議会の運営と全く関係のない議員の議場外における個人的行為は、懲罰事由とすることができない。
事件番号: 平成29(行ヒ)216 / 裁判年月日: 平成30年4月26日 / 結論: 破棄自判
愛知県議会議長の同県議会議員に対する発言の取消命令の適否は,司法審査の対象とはならない。