一 行政事件訴訟特例法の適用にあたつては、地方議会の議員懲罰議決はこれを行政処分と、これを行う地方議会はこれを行政庁と解し、同法により懲罰議決の取消を求める訴を提起することができる。 二 地方公共団体の議会の会議規則中議員懲罰に関する実体規定を、規則制定前の議員の行為に適用し懲罰議決をすることは違法である。
一 地方公共団体の議会の議員懲罰議決の取消を求める訴の適否 二 地方公共団体の議会の会議規則中議員懲罰に関する実体規定を遡及適用することの適否
地方自治法134条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
地方議会による議員への懲罰議決は、執行機関の処分を経ず直接に効力を生じるため行政処分にあたり、これを行う議会は行政庁として行政事件訴訟の被告適格を有する。
問題の所在(論点)
地方議会による議員への懲罰議決が「行政処分」に該当するか、また、議決を行う議会が「行政庁」として行政事件訴訟の被告となり得るか。
規範
地方公共団体の議会が議員に対して行う懲罰議決は、執行機関による行政処分を介さず直接に効力を生じる。したがって、行政事件訴訟の適用においては、当該議決は「行政庁の処分」に該当し、これを行う議会は「行政庁」に該当すると解するのが相当である。
重要事実
市議会議員に対し、市議会が懲罰議決を行った。これに対し、当該議員が懲罰議決の取消しを求めて提訴したところ、上告人は、市議会は執行機関(行政庁)ではなく、その議決も行政処分ではないため、行政事件訴訟特例法(当時)の対象にならないと主張して争った。
事件番号: 昭和26(オ)23 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方議会議員の除名議決は、議員の地位を失わせる法的効果を持つ一種の行政処分であり、裁判所の司法審査の対象となる。議員の発言が地方自治法132条の「無礼の言葉」に該当するか否かは、議会の裁量に属する事柄ではなく、裁判所が客観的に判断すべき法律問題である。 第1 事案の概要:市議会議員(被上告人)が議…
あてはめ
通常、議会の議決は外部に対する直接の効力を持たず、執行機関の処分を待って効力を生じるものである。しかし、議員懲罰議決は、執行機関の介在なくして対象議員の権利義務に直接影響を及ぼす性質を有している。この点において、懲罰議決は通常の議決とは異なり、行政処分と何ら変わるところがない。また、行政訴訟における行政庁は法人格を必要としないため、議会が法人でないことは行政庁性を否定する理由にはならない。
結論
懲罰議決は行政処分であり、議会は行政庁として扱われる。したがって、本件議決の取消訴訟は適法である。
実務上の射程
本判決は、議会の内部行為であっても、直接に権利義務を形成する懲罰議決については処分性を認めるものである。ただし、後の判例(最大判昭35.10.19等)により、除名以外の懲罰は「内部規律の問題」として司法審査の対象外とされる(部分社会の法理)点に注意が必要である。答案上は、処分性の肯否とあわせて司法審査の限界(部分社会の法理)の文脈で整理すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)856 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
地方公共団体の議会の解散請求署名簿の署名の効力に関する訴訟において、議会は当事者能力を有しない。
事件番号: 昭和25(オ)200 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
昭和二三年法律第一七九号(地方自治法の一部を改正する法律)附則第二条第五項の都道府県議会の議決の取消を求める訴は不敵法である。
事件番号: 昭和28(オ)425 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 棄却
議会の運営と全く関係のない議員の議場外における個人的行為は、懲罰事由とすることができない。