改良住宅の入居者が死亡した場合において,その死亡時に当該入居者と同居していた者で,市長の承認を受けて同居している者等に限り,市長の承認を受けて引き続き当該改良住宅に居住することができる旨を定める京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項は,住宅地区改良法29条1項,公営住宅法48条に違反し違法,無効であるとはいえない。
改良住宅の入居者が死亡した場合の使用権の承継について定める京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項と住宅地区改良法29条1項,公営住宅法48条
住宅地区改良法29条1項,公営住宅法48条,民法896条,京都市市営住宅条例(平成9年京都市条例第1号)24条1項
判旨
住宅地区改良法に基づく改良住宅の使用権は、民法の相続の規定が当然に適用されるものではなく、入居者の死亡により当然に相続人に承継されることはない。また、使用権の承継を市長の承認を受けた同居者に限定する条例の規定は、同法の趣旨に照らし適法かつ有効である。
問題の所在(論点)
住宅地区改良法に基づく改良住宅の使用権が相続の対象となるか。また、承継を特定の同居人に限定する条例の規定が、同法29条1項等に違反し無効とならないか。
規範
改良住宅の使用権につき相続の規定が当然に適用されるか否かは、当該住宅の設置目的や入居者選別プロセスの性質により判断される。同法に基づく入居は、従前の権利に対する「補償」ではなく、住宅困窮者の「居住の安定」を図るための福祉的措置である。したがって、使用権は入居者本人の居住の必要性に着目した一身専属的な性質を有し、民法の相続規定は当然には適用されない。その承継の可否や範囲については、法の趣旨に反しない限り、管理主体の条例に委ねられる。
重要事実
被上告人(京都市)は、住宅地区改良法に基づき建設された改良住宅を、住宅地区改良事業に伴い住宅を失ったAに賃貸した。上告人は、Aを介護するため同居を開始したが、市の条例に基づく同居承認を得ていなかった。Aの死亡後、上告人は他の相続人との遺産分割協議により本件住宅の使用権を取得したと主張し、市に対して使用権の確認等を求めた。一方、市は条例(死亡時同居者に限り、承認を得て承継できる旨の規定)に基づき、上告人の承継を認めず明渡しを求めて反訴した。
事件番号: 平成4(オ)279 / 裁判年月日: 平成9年3月27日 / 結論: 破棄差戻
マンションの分譲業者とその専有部分を建築当初に取得した者が、右専有部分を屋内駐車場として使用し、他の区分所有者の承諾なしに駐車場以外の用途に変更しない旨の合意をした場合に、右専有部分は、屋内駐車場として設計、宣伝され、建築当時においてはその用途を駐車場以外に変更することは建築基準法上許されなかったなどの事情があったとし…
あてはめ
改良住宅は、事業施行に伴い住宅を失い、かつ「住宅に困窮すると認められるもの」に限定して提供される(法18条)。また、一定の収入超過者には明渡努力義務が課される(法29条3項)。これらの規定から、入居は生活困窮という属人的な事情に基づく救済措置であり、従前の不動産上の権利に対する対価としての補償ではない。したがって、使用権は相続人が当然に承継する性質のものではない。京都市の条例24条1項が、承継の対象を市長の承認を受けた「死亡時同居者」に限定している点は、残された同居親族の居住安定を図るという法の趣旨に沿う合理的な限定であり、法に違反しない。
結論
改良住宅の使用権は当然には相続されない。上告人は条例上の承認要件を満たす同居人ではないため、本件住宅の使用権を承継できず、市の明渡請求は認められる。
実務上の射程
公営住宅の使用権の承継を否定した最判平2・10・18の法理が、改良住宅にも及ぶことを明示した点に意義がある。答案上は、公的住宅の使用権の承継が問題となる場面で、①設置目的(福祉的・行政目的)、②入居要件(困窮性)、③対価性の有無(補償ではないこと)を論拠に、民法上の相続を否定する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和59(オ)320 / 裁判年月日: 昭和60年1月31日 / 結論: 破棄自判
私立大学の退職金規程が職員の死亡退職金を「遺族」に支給するとのみ定めている場合には、その受給権者は、相続人ではなく、職員の死亡の当時、主としてその収入により生計を維持していた配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)が第一順位の受給権者となると解すべきである。
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【結論(判旨の要点)】福島第一原発事故の区域外避難者に対し、国から使用許可を受けた自治体が、明渡請求権を代位行使することは、セーフティネット契約締結の見込みが潰えた等の事情があれば、権利の濫用等に当たらず適法である。 第1 事案の概要:福島第一原発事故の避難者(上告人)に対し、福島県(被上告人)は東京都を通じて国家公務…
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【結論(判旨の要点)】判決文に明白な誤記がある場合であっても、それが結論に影響を及ぼさない軽微なものであれば、上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:原判決において、「控訴本人の供述」と記載すべき箇所を「証人D(控訴本人の父)の供述」と記載する誤記があった。上告人は、この点を含め複数の上告理由を主張して本件上告を提…