私立大学の退職金規程が職員の死亡退職金を「遺族」に支給するとのみ定めている場合には、その受給権者は、相続人ではなく、職員の死亡の当時、主としてその収入により生計を維持していた配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)が第一順位の受給権者となると解すべきである。
私立大学の退職金規程が職員の死亡退職金を「遺族」に支給するとのみ定めている場合に職員の死亡の当時主としてその収入により生計を維持していた配偶者(内縁の配偶者を含む。)が第一順位の受給権者となるとされた事例
私立学校教職員共済組合法(昭和54年法律第74号による改正前のもの)25条,国家公務員共済組合法2条,国家公務員共済組合法43条
判旨
就業規則等に「遺族に支給する」旨の定めがある死亡退職金は、遺族の生活保障を目的とし、民法上の相続とは別の立場で受給権者を定めたものと解され、受給権者である遺族はこれを自己固有の権利として取得する。
問題の所在(論点)
就業規則等に「遺族」に支給する旨の定めがある死亡退職金の受給権者の範囲及び順位は、民法の相続規定に従うべきか。あるいは、受給権者が相続人とは別に固有の権利として取得するものと解すべきか。
規範
死亡退職金の支給に関する規程が、受給権者を「遺族」と定め、かつその範囲や順位が民法の相続規定と著しく異なる定め方(事実婚配偶者の保護や生計維持要件等)をしている場合、当該規程は専ら遺族の生活保障を目的とする趣旨であると解される。この場合、死亡退職金は相続財産に属さず、受給権者たる遺族が規程に基づき直接自己固有の権利として取得する。
重要事実
私立大学教授Eが死亡し、大学の退職金規程に基づき死亡退職金が支払われることとなった。当時の規程には「遺族に支給する」とのみ定められ、具体的な順位等の記載はなかったが、後の改正で「私立学校教職員共済組合法25条等を準用する」旨が明記された。Eには、婚姻届は出していないが事実上の婚姻関係にあった上告人と、法定相続人である養子の被上告人がいた。大学は受給権者の不確知を理由に退職金を供託し、上告人と被上告人が還付請求権の帰属を争った。
あてはめ
本件規程は、改正後において事実婚配偶者を第一順位とするなど、民法の相続原則とは著しく異なる定めを置いている。これは遺族の生活保障を目的とする趣旨であり、改正前の「遺族」という文言も、当時の社会保険関係法規の存在を考慮すれば同様の趣旨を当然の前提としていたと解するのが相当である。したがって、本件退職金は相続財産ではなく、規程が定める遺族が固有の権利として取得する。事実婚関係にあり、Eの収入により生計を維持していた上告人が第一順位の受給権者であり、法定相続人である被上告人に優先する。
結論
本件退職金還付請求権は、相続人である被上告人ではなく、規程上の遺族に該当する上告人に帰属する。
実務上の射程
死亡退職金が「相続財産」に該当するか「受給権者固有の財産」に該当するかを判断する際のリーディングケースである。答案上は、まず就業規則等の規定内容を確認し、それが生活保障目的(相続放棄の効力が及ばない、遺留分算定の基礎に含まれない等の結論に直結する)といえるかを論証する際に本判例の枠組みを用いる。
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