判旨
就業規則上の解雇事由である「やむを得ない正当な事由」の有無の判断において、憲法で保障された労働者の基本的人権を考慮することは当然であり、これらを考量した上での判断は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
就業規則に基づく解雇の有効性判断(「やむを得ない正当な事由」の存否)において、労働者の基本的人権を考慮すべきか、また、それらを考慮した判断が憲法に抵触するか。
規範
就業規則の解雇規定(「やむを得ない正当な事由」等)の解釈・適用にあたっては、使用者の視点のみならず、憲法上の基本的人権を含む諸般の事情を総合的に考量して判断すべきである。
重要事実
被上告会社(使用者)が、就業規則15条1項2号所定の「やむを得ない正当の事由」があるとして、上告人(労働者)らを解雇した。これに対し上告人らは、原審が当該事由の有無を使用者の観点からのみ判断したことは、憲法で保障された基本的人権を無視するものであり違憲であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審は上告人らが主張する基本的人権に関する諸事情を無視したわけではなく、それらを十分に考量した上で、本件解雇が「やむを得ない正当な事由」に該当すると判断している。したがって、使用者の利益のみを一方的に考慮したものとはいえず、憲法の趣旨に反するような判断の過程・内容があるとは認められない。
結論
本件解雇には就業規則上の正当な事由が認められ、原審の判断に憲法違反の不当な点はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
解雇権濫用法理(労働契約法16条)の形成過程における初期の判例であり、就業規則の文言解釈に憲法的価値が反映されることを示唆している。答案上は、解雇事由の「相当性」を判断する際、使用者の業務上の必要性だけでなく、労働者側の不利益(人権等)を比較衡量すべき根拠として位置づけられる。
事件番号: 昭和30(オ)788 / 裁判年月日: 昭和32年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人による解約申入れに「正当の事由」があるか否かは、事案ごとに確定された事実関係に基づき個別具体的に判断されるべきである。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が、賃借人(上告人)に対し、本件家屋について解約の申入れを行った。原審(二審)は、諸般の事実関係を確定した上で、当該解約申入れには正当事…