判旨
判決文に明白な誤記がある場合であっても、それが結論に影響を及ぼさない軽微なものであれば、上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
判決文中の明らかな誤記が、最高裁判所における民事上告事件の特例に関する法律にいう「法令の解釈に関する重要な主張を含む」もの、あるいは同法所定の上告理由に該当するか。
規範
最高裁判所における民事上告事件の特例に関する法律に基づき、上告理由として認められるためには、判決に法令の解釈に関する重要な事項を含む必要がある。判決文中に単純な誤記(事実誤認に至らない程度の表記上の誤り)が含まれるに過ぎない場合は、直ちに同法所定の上告理由を構成するものではない。
重要事実
原判決において、「控訴本人の供述」と記載すべき箇所を「証人D(控訴本人の父)の供述」と記載する誤記があった。上告人は、この点を含め複数の上告理由を主張して本件上告を提起した。
あてはめ
本件における原判決の「控訴本人の供述」という記載が「証人D(控訴本人の父)の供述」の誤記であることは明白である。このような表記上の明らかな誤りは、法令の解釈や適用の正否に直結するものではなく、特例法1号ないし3号のいずれにも該当しない。したがって、判決の結論を左右するような実質的な違法があるとは認められない。
結論
本件上告は、特例法所定の上告理由に該当せず、また法令の解釈に関する重要な主張も含まないため、棄却される。
実務上の射程
判決文の誤記訂正(民訴法257条)の対象となるような明白な誤記は、上告審での争点とはなり得ないことを示唆している。答案上は、些末な形式的瑕疵のみを理由とした上告の不適法性を指摘する際のリファレンスとなり得るが、本判決自体は訴訟手続上の形式的な判断に留まるものである。
事件番号: 昭和42(オ)1209 / 裁判年月日: 昭和45年4月16日 / 結論: 破棄差戻
未登記建物の所有者が、その建物につき家屋台帳上他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認した場合には、その所有者は、右台帳上の名義人から権利の設定を受けた善意の第三者に対し、民法九四条二項の類推適用により、右名義人がその所有権を有しなかつたことをもつて、対抗することができない。
事件番号: 昭和26(オ)720 / 裁判年月日: 昭和28年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告人の主張は実質的に原審の証拠取捨および事実認定を争うものにすぎず、特例法上の上告理由に該当しない。原審が上告人の家屋占有を認定している以上、前提事実を異にする判例の引用は失当である。 第1 事案の概要:上告人は本件家屋の占有を否定して争ったが、原審は上告人が当該家屋を占有している旨の事実認定を…
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。