債権差押命令の送達を受けた第三債務者が,差押債権につき差押債務者に対して弁済をし,差押債権者に対して更に弁済をした後,差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合,後者の弁済は,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象とならない。
第三債務者が差押債務者に対する弁済後に差押債権者に対してした更なる弁済は,差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象となるか
破産法162条1項,民法481条1項
判旨
債権差押命令を受けた第三債務者が差押債務者に二重弁済した後、差押債権者へ行った弁済は、既に債権が消滅しているため「破産者の財産をもって債務を消滅させる行為」に当たらず、否認権行使の対象とならない。
問題の所在(論点)
債権差押命令を受けた第三債務者が、差押債務者に対して無効な弁済をした後、改めて差押債権者に対して行った弁済が、破産法162条1項の「債務の消滅に関する行為」として否認の対象となるか。
規範
破産法162条1項の「債務の消滅に関する行為」とは、破産者の意思に基づく行為のみならず、執行力のある債務名義に基づき、破産者の財産をもって債務を消滅させる効果を生ぜしめるものをいう。もっとも、第三債務者が差押命令送達後に債務者へ弁済し、これを差押債権者に対抗できないために(民法481条1項)改めて差押債権者へ弁済した場合、前者の弁済により債務者の債権は既に消滅している。したがって、後者の弁済は破産者の財産をもって債務を消滅させる効果を生じさせるものとはいえず、同項の否認権行使の対象とならない。
重要事実
債権者(上告人)は、債務者Aの第三債務者(本件会社)に対する給料債権を差し押さえ、差押命令が本件会社に送達された。しかし、本件会社は送達後もAに対して給料全額を弁済した。その後、上告人が本件会社に取立訴訟等を提起したため、本件会社は上告人に対し、和解に基づき差押相当額を弁済した(本件支払2)。その後Aが破産し、管財人(被上告人)が本件支払2を偏頗弁済として否認し、給付を求めた。
あてはめ
本件において、本件会社は差押命令送達後、Aに対して給料債権の全額を弁済している。この時点でAの本件会社に対する給料債権は消滅している。その後の「本件支払2」は、民法481条1項に基づきAへの弁済を上告人に対抗できない本件会社が、自らの義務として上告人に支払ったものである。したがって、本件支払2はAの財産をもって債務を消滅させる効果を生ぜしめたものとは認められない。
結論
本件支払2は、破産法162条1項に規定する「債務の消滅に関する行為」に当たらないため、否認権行使の対象とはならない。
実務上の射程
否認権の対象となる行為が「破産者の財産を減少させるもの」である必要があることを、条文の「債務の消滅」という文言の解釈を通じて明確にした。第三債務者が二重払いの危険を負担して行った支払いは、破産者の責任財産を毀損したとはいえない場合に活用する。
事件番号: 平成13(受)1797 / 裁判年月日: 平成16年7月16日 / 結論: 棄却
債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡は,破産法72条2号に基づく否認権行使の対象となる。
事件番号: 昭和39(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和41年4月8日 / 結論: 棄却
一 破産債権を有する者が支払の停止または破産の申立があつたことを知つて破産者に対し債務を負担した場合には、破産法第一〇四条第三号本文の相殺制限の規定は類推適用されない。 二 破産債権者の相殺権行使は、否認権の対象とならない。