1 予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従い,年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として,年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら,6年間にわたり,1節当たり数百万円から数千万円,1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続けたこと,上記のいずれの年についても年間を通じての収支で利益を得ていた上,その金額も,少ない年で約1800万円,多い年では約2億円に及んでおり,回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたといえることなど判示の事情の下においては,上記の購入により得た当たり馬券の払戻金は,所得税法35条1項にいう雑所得に当たる。 節 :競馬開催日又はこれが連続する場合における当該連続する競馬開催日を併せたもの等 回収率:全ての有効馬券の購入代金の合計額に対する当たり馬券の払戻金の合計額の比率 2 偶然性の影響を減殺するために長期間にわたって多数の馬券を頻繁に購入することにより,年間を通じての収支で利益が得られるように継続的に馬券を購入しており,そのような一連の馬券の購入により利益を得るためには,外れ馬券の購入は不可避であったという事情の下においては,外れ馬券の購入代金は,雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として,所得税法37条1項にいう必要経費に当たる。
1 競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法35条1項にいう雑所得に当たるとされた事例 2 競馬の外れ馬券の購入代金が雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として所得税法37条1項にいう必要経費に当たるとされた事例
(1につき) 所得税法34条1項,所得税法35条1項 (2につき) 所得税法35条2項,所得税法37条1項
判旨
馬券の払戻金に係る所得が、営利を目的とする継続的行為から生じたものといえる場合には、一時所得ではなく雑所得に該当し、その獲得のために不可避であった外れ馬券の購入代金は必要経費に当たる。
問題の所在(論点)
多額・高頻度で行われた馬券の払戻金に係る所得が、一時所得(所得税法34条1項)と雑所得(同法35条1項)のいずれに該当するか。また、外れ馬券の購入代金が、雑所得の計算において必要経費(同法37条1項)に含まれるか。
規範
所得税法34条1項および35条1項の区分において、利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡所得以外の所得のうち「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」は雑所得に該当する。その判断にあたっては、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮すべきである。また、雑所得に該当する場合、総収入金額を得るため直接に要した費用(同法37条1項)として、一連の購入行為において利益を得るために不可避であった支出は必要経費として認められる。
事件番号: 平成26(あ)948 / 裁判年月日: 平成27年3月10日 / 結論: 棄却
1 馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして,当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係(判文参照)の下では,払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる。 2 外れ馬券を含む全…
重要事実
被上告人は、インターネットを介して6年間にわたり、年間合計3億円から21億円という多額の馬券を購入し続けた。購入方法は、独自の分析に基づき予想の確度と配当率を組み合わせた購入パターンを定め、年間収支で利益が出るよう偶然性の影響を減殺することを目標に、全レースの約7割に及ぶ頻度で購入を繰り返すものであった。その結果、被上告人は6年間いずれの年においても年間収支で数千万円から2億円の利益を上げ、回収率は100%を超えていた。
あてはめ
まず、被上告人は独自の購入パターンに従い、6年間にわたり多額かつ多数の馬券を購入し続けており、その態様から「継続的行為」といえる。次に、毎年多額の利益を計上し、回収率が総体として100%を超えるよう馬券を選別して購入していた実態に鑑みると、客観的に「営利を目的とするもの」であったと認められる。したがって、本件所得は雑所得に該当する。そして、被上告人は年間収支で利益を得るために長期間・多数・頻繁に馬券を購入しており、一連の行為の中で利益を得るためには外れ馬券の購入は不可避であったといえる。ゆえに、外れ馬券の購入代金は当たり馬券の払戻金を得るため「直接に要した費用」に当たる。
結論
本件所得は雑所得に該当し、外れ馬券の購入代金は必要経費として控除できるため、課税当局による更正処分等は取り消されるべきである。
実務上の射程
一般的な娯楽としての馬券購入は依然として一時所得に分類されるが、本件のように「独自のノウハウに基づき、網羅的・継続的に購入し、客観的に射幸性を排して営利目的が認められる特段の事情」がある場合には雑所得となる。答案では、単なる回数だけでなく、利益獲得の数理的・客観的な仕組みの有無に着目して、営利性・継続性を基礎づける際に活用する。
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成13(行ヒ)276 / 裁判年月日: 平成17年2月1日 / 結論: 破棄自判
1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。 2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に…
事件番号: 平成16(行ヒ)141 / 裁判年月日: 平成17年1月25日 / 結論: 棄却
米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が,親会社である米国法人から親会社の株式をあらかじめ定められた権利行使価格で取得することができる権利(いわゆるストックオプション)を付与されてこれを行使し,権利行使時点における親会社の株価と所定の権利行使価格との差額に相当する経済的利益を得た場合において,上記権利は,親会社が同…