1 馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定等に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして,当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げるなどしていた本件事実関係(判文参照)の下では,払戻金は所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる。 2 外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金という費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するなどの本件事実関係(判文参照)の下では,外れ馬券の購入代金は,雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる。 (1,2につき意見がある。)
1 競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとされた事例 2 競馬の外れ馬券の購入代金について,雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとされた事例
(1につき) 所得税法34条1項, 所得税法35条1項 (2につき) 所得税法37条1項
判旨
自動購入ソフトを用いて長期間かつ網羅的に馬券を購入し、多額の利益を恒常的に上げている場合、払戻金は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として雑所得に当たり、外れ馬券の購入代金も必要経費に含まれる。
問題の所在(論点)
1. 独自の条件設定に基づき大量・網羅的に購入された馬券の払戻金は、所得税法上の一時所得(34条1項)と雑所得(35条1項)のいずれに該当するか。 2. 雑所得に該当する場合、外れ馬券の購入代金は必要経費(37条1項)として控除できるか。
規範
所得が所得税法34条1項の「一時所得」か、35条1項の「雑所得」に該当するかは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得といえるかによって決まる。その判断にあたっては、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間等の事情を総合考慮すべきである。また、雑所得に該当する場合、一連の馬券購入が一体の経済活動の実態を有するといえるならば、外れ馬券の購入代金は所得税法37条1項の「総収入金額を得るため直接に要した費用」等として必要経費に当たる。
事件番号: 平成28(行ヒ)303 / 裁判年月日: 平成29年12月15日 / 結論: 棄却
1 予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従い,年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として,年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら,6年間にわたり,1節当たり数百万円から数千万円,1年当たり合計3億円から21億円程度となる多数の馬券を購入し続け…
重要事実
被告人は、馬券自動購入ソフトを使用し、インターネットを介して長期間かつ頻繁に網羅的な購入を行っていた。独自の条件設定と計算式により、回収率を高めるよう分析した上で、3年間で計約30億円もの馬券を購入し、計約1.4億円の利益を上げていた。被告人の意図は、個々の馬券の的中ではなく、長期的・網羅的な購入により払戻金合計と購入代金合計の差額を利益とすることにあった。
あてはめ
1. 被告人は、ソフトを用いて毎週土日のほぼ全レースで年間10億円前後の馬券を数年にわたり購入しており、偶発的要素を減殺して多額の利益を恒常的に上げていた。この購入態様は、個々の的中に着目しない「一体の経済活動」の実態を有しており、営利目的の継続的行為といえる。したがって、本件払戻金は雑所得に当たる。 2. 本件では一連の馬券購入が一体の経済活動といえるため、当たり馬券の代金のみならず、外れ馬券の購入代金も当たり馬券の払戻金という収入に対応する費用といえる。また、娯楽等の消費生活上の費用(家事費)ともいえない。よって、外れ馬券の代金は必要経費に当たる。
結論
1. 本件払戻金は雑所得に該当する。 2. 外れ馬券の購入代金は必要経費として所得金額から控除できる。
実務上の射程
本判決は、競馬の払戻金が原則として一時所得であることを前提としつつ、自動購入ソフト等を用いた機械的・網羅的購入という特殊な態様がある場合に限り雑所得性を認めるものである。答案上は、本件のような「営利目的の継続的行為」といえる特段の事情(客観的な頻度、回数、網羅性、多額の利益の恒常性)があるか否かのあてはめが重要となる。
事件番号: 昭和37(あ)343 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
清算所得を得る目的で自己の主宰する会社の人的物的施設を利用し又は他店を利用して、年間、売り買いともに数百件の人絹清算取引の委託をなし、取引金額二億円に近く、利益所得も約七八〇万円ないし約二、八〇〇万円にのぼる本件清算取引所得は、営利を目的とする継続的に行う事業による所得として所得税法上の事業所得と認むるを相当し、同法上…