判例違反の主張が欠前提とされた事例
判旨
所得の帰属および計上時期の判定において、株式配当金の実質的な帰属者が誰であるか、および所得計上時期としての権利確定時期の認定に際しては、権利行使の可能性の存否を検討すべきである。
問題の所在(論点)
所得税法上、株式配当金の帰属者をいかに決定すべきか。また、所得の計上時期としての「権利の確定」時期の認定において、権利行使の可能性の有無を考慮すべきか。
規範
所得の帰属については、形式的な名義にかかわらず実質的にその収益を享受する者に帰属すると解すべきであり(実質所得者課税の原則)、また、所得の計上時期については、単なる形式的な権利の発生だけでなく、客観的に見て権利行使の可能性が認められる時期をもって「権利の確定」があったと解する。
重要事実
被告人が株式配当金を得ていた事案において、その配当所得が実質的に誰に帰属するのか、および所得としていつ計上すべきかが争点となった。弁護側は、原判決が所得の計上時期(権利確定時期)の認定において権利行使の可能性の検討を怠ったと主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は株式配当金の実質的な帰属者が被告人であると判断しており、これは実質所得者課税の原則に合致する。また、権利確定時期の認定についても、原判決は権利行使の可能性の存否について検討を加えていることが判文上明らかである。したがって、権利行使が可能な状態をもって所得の計上時期とした判断に合理性があるといえる。
結論
所得の計上時期の認定に際し権利行使の可能性を検討した原判決に誤りはない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
実質所得者課税の原則(所得税法12条等)および権利確定主義の適用局面において、形式的な権利発生のみならず「権利行使の可能性」という実質的要素を考慮すべきことを示す。答案上では、所得の帰属・時期が問題となる事案での規範の裏付けとして機能する。
事件番号: 平成9(あ)1255 / 裁判年月日: 平成12年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所得税法12条の文言は、租税法律主義に反するほど不明確ではない。所得の帰属者の判定にあたっては、形式的な名義のみならず、実質的な収益の享受主体を検討すべきである。 第1 事案の概要:被告人が所得税法違反(脱税)に問われた事案において、有価証券の売買益、利子所得、配当所得などの収益が誰に帰属するかが…
事件番号: 昭和38(あ)961 / 裁判年月日: 昭和39年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実質課税の原則は、明文の規定が設けられる以前から税法上の条理として是認されていたものであり、これを明文化した規定の施行前の所得に対しても、当該原則を適用して課税することは合憲である。 第1 事案の概要:被告人Aは、昭和27年分の煙草小売所得について、Cの名義を用いて事業を行っていた。原審は、実質課…