清算所得を得る目的で自己の主宰する会社の人的物的施設を利用し又は他店を利用して、年間、売り買いともに数百件の人絹清算取引の委託をなし、取引金額二億円に近く、利益所得も約七八〇万円ないし約二、八〇〇万円にのぼる本件清算取引所得は、営利を目的とする継続的に行う事業による所得として所得税法上の事業所得と認むるを相当し、同法上の一時所得と認むべきものではないとした原判示は正当である。
清算取引所得(人絹の作物取引による所得)が所得税法第九条第一項第九号の一時所得ではなく、同法条第四号の事業所得と認められた事例。
所定得法9条1項4号,所得税法9条1項9号,所定得法69条1項,所得税法73条
判旨
清算所得を得る目的で、自己が主宰する会社の施設や他店を利用し、年間数百件に及ぶ多額の清算取引を継続的に行った場合の所得は、一時所得ではなく事業所得に該当する。
問題の所在(論点)
年間数百件に及ぶ多額の人絹清算取引によって得られた所得が、所得税法上の「事業所得」に該当するか、それとも「一時所得」に該当するか。
規範
所得税法上の「事業所得」とは、営利を目的とし、かつ、継続的に行われる事業から生ずる所得を指す。判断にあたっては、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の計算と責任において独立して行われているか、及び取引の規模や態様(人的・物的施設の利用状況等)を総合的に考慮すべきである。
重要事実
被告人は、清算所得を得る目的で、自己が主宰する会社の人的・物的施設を利用し、あるいは他店を利用して、人絹清算取引の委託を行っていた。その規模は、年間で売り買いともに数百件に及び、取引金額は2億円近く、得られた利益所得も約780万円ないし約2,800万円という多額にのぼるものであった。
あてはめ
本件取引は、清算所得を得るという営利目的が明確である。また、自己の主宰する会社の施設等を活用し、年間数百件もの取引を反復継続して行っていることから、単なる一時的な投機を超えた継続性が認められる。さらに、取引金額が2億円近く、所得額も多額であるという規模の大きさは、社会通念上「事業」と評価されるに十分な態様を備えているといえる。したがって、これら一連の取引から生じた所得は一時的なものではなく、事業所得としての性質を有する。
結論
本件清算取引所得は、営利を目的として継続的に行う事業による所得として、所得税法上の事業所得と認めるのが相当である。
実務上の射程
本判決は、事業所得と一時所得(あるいは雑所得)の区別において、営利目的、継続性、及び施設利用等の客観的態様を重視する実務上の基本指針を示している。所得の分類が争点となる事案において、取引回数、金額、人的・物的設備等の事実を拾い上げる際のメルクマールとして活用できる。
事件番号: 昭和33(あ)1569 / 裁判年月日: 昭和38年2月12日 / 結論: その他
所得税逋脱の意思による場合であつても、単に確定申告書を提出しなかつただけでは、所得税法第六九条第一項の罪(所得税逋脱罪)は成立しない。