訴訟費用のうち一定割合を受救助者(訴訟上の救助の決定を受けた者)の負担とし,その余を相手方当事者の負担とする旨の裁判が確定した後,訴訟費用の負担の額を定める処分を求める申立てがされる前に,裁判所が受救助者に猶予した費用につき当該相手方当事者に対して民訴法85条前段の費用の取立てをすることができる額を定める場合において,当該相手方当事者が,訴え提起の手数料として少額とはいえない額の支出をした者の地位を承継し,受救助者の負担すべき費用との差引計算を求めることを明らかにしているなど判示の事情の下では,当該相手方当事者に対し上記の差引計算を求める範囲を明らかにするよう求めることのないまま,上記の同条前段の費用の取立てをすることができる額につき,受救助者に猶予した費用に上記裁判で定められた当該相手方当事者の負担割合を乗じた額とすべきものとした原審の判断には,違法がある。
訴訟費用のうち一定割合を受救助者の負担とし,その余を相手方当事者の負担とする旨の裁判が確定した後,訴訟費用の負担の額を定める処分を求める申立てがされる前に,裁判所が受救助者に猶予した費用につき当該相手方当事者に対して民訴法85条前段の費用の取立てをすることができる額を定める場合において,その額につき,受救助者に猶予した費用に上記裁判で定められた当該相手方当事者の負担割合を乗じた額とすべきものとした原審の判断に違法があるとされた事例
民訴法85条前段,民事訴訟費用等に関する法律16条2項,民事訴訟費用等に関する法律15条1項
判旨
訴訟費用額確定処分がなされる前に民訴法85条前段に基づき国が猶予費用の取立てを行う場合において、相手方が自らの支出した費用の差引計算を求めているときは、裁判所は相手方にその範囲を明らかにするよう求めた上で、合理的な裁量により取立額を定めるべきである。
問題の所在(論点)
訴訟費用額確定処分が申し立てられる前に、裁判所が民訴法85条前段に基づき猶予費用の取立額を定める際、相手方が差引計算を求めている場合に、裁判所は相手方の負担すべき費用等を審理すべきか。
規範
民訴法85条前段に基づく費用の取立ては、受救助者の相手方に対する訴訟費用請求権を国が代位行使する性質を有するため、取立額は当該請求権の額を超えることができない。もっとも、確定処分前は各当事者の負担額が未確定であるため、裁判所は事案に係る事情を踏まえた合理的な裁量によって取立額を定める。原則として、猶予費用に負担割合を乗じた額とすることも裁量の範囲内であるが、相手方が差引計算(民訴法71条2項参照)を求める意思を明らかにしている場合には、裁判所は訴訟記録等に基づき、相手方にその範囲を釈明させた上で、受救助者が負担すべき費用の有無及び額を審理し、裁量権を行使しなければならない。
事件番号: 平成29(許)1 / 裁判年月日: 平成29年7月20日 / 結論: 棄却
既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担は,執行裁判所が,民事執行法20条において準用する民訴法73条の規定に基づいて定めるべきである。
重要事実
受救助者Bは訴訟上の救助を受け、1審・2審の手数料合計29万7500円を猶予された。BとA(抗告人らが承継)との訴訟の確定判決では、Bに生じた費用の5分の3と抗告人ら側の費用の合計を2分し、その1を抗告人らの負担とした。原々審は、確定処分前であることを理由に、猶予費用に上記負担割合を乗じた8万9250円の取立てを決定した。これに対し抗告人らは、被承継人Aが支出した訴え提起手数料8万6000円等につき、Bが負担すべき費用との差引計算を求めて即時抗告した。
あてはめ
本件では、抗告人らの被承継人Aが8万6000円という少額とはいえない費用を支出しており、抗告人らは即時抗告の手続においてBの負担すべき費用との差引計算を求める意思を明確に表示している。このような状況下では、単に猶予費用に負担割合を乗じるだけでなく、裁判所は抗告人らに対し差引計算を求める範囲を釈明させ、訴訟記録に基づきBの負担すべき費用の有無・額を審理すべきであったといえる。それにもかかわらず、釈明や審理を尽くさずに取立額を定めた原審の判断は、事案に係る事情を踏まえた合理的な裁量の範囲を逸脱したものと解される。
結論
原決定には裁量権逸脱の違法があるため破棄し、抗告人らに差引計算の範囲を明らかにさせた上で審理を尽くさせるため、原審に差し戻す。
実務上の射程
判決文からは不明(特段の限定なく、民訴法85条前段の取立決定全般に妥当する判断枠組みであると考えられる)。
事件番号: 平成25(許)4 / 裁判年月日: 平成25年11月13日 / 結論: 棄却
更生債権に関する訴訟が更生手続開始前に係属した場合において,当該訴訟が会社更生法156条又は158条の規定により受継されることなく終了したときは,当該訴訟に係る訴訟費用請求権は,更生債権に当たる。
事件番号: 平成19(許)7 / 裁判年月日: 平成19年12月4日 / 結論: 棄却
民事訴訟において,訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合には,同決定は当然にその効力を失い,裁判所は,同決定を民訴法84条の規定に従って取り消すことなく,同決定を受けた者に対し,猶予した費用の支払を命ずることができる。
事件番号: 平成16(行フ)4 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 棄却
訴訟上の救助の決定に対し,訴訟の相手方当事者は,即時抗告をすることができる。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成28(許)46 / 裁判年月日: 平成29年10月10日 / 結論: 破棄自判
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。