民事訴訟において,訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合には,同決定は当然にその効力を失い,裁判所は,同決定を民訴法84条の規定に従って取り消すことなく,同決定を受けた者に対し,猶予した費用の支払を命ずることができる。
訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合において,裁判所が同決定を民訴法84条の規定に従って取り消すことなく同決定を受けた者に対し猶予した費用の支払を命ずることの許否
民訴法84条
判旨
訴訟上の救助決定を受けた者の全部敗訴と訴訟費用負担が確定した場合、救助決定は当然に効力を失い、裁判所は取消手続を経ずに猶予費用の支払を命じることができる。
問題の所在(論点)
訴訟上の救助決定を受けた者が全部敗訴し、訴訟費用の負担が確定した場合に、裁判所は民訴法84条による救助決定の取消手続を経ることなく、当然に効力が失われたものとして費用の支払を命じることができるか。
規範
訴訟上の救助決定を受けた者が、①全部敗訴の確定、および②訴訟費用を全部負担させる旨の裁判の確定という要件を満たした場合、救助決定は当然にその効力を失う。この場合、裁判所は民事訴訟法84条に基づく救助決定の取消決定を経ることなく、直ちに猶予費用の支払を命じることができる。
重要事実
抗告人は、訴訟上の救助決定を受けて訴訟を追行したが、最終的に抗告人の全部敗訴が確定した。あわせて、抗告人に訴訟費用の全部を負担させる旨の裁判も確定した。これに対し、裁判所が救助決定の取消手続を経ずに猶予されていた費用の支払を命じたところ、抗告人がこれを不服として抗告した。
事件番号: 平成25(許)4 / 裁判年月日: 平成25年11月13日 / 結論: 棄却
更生債権に関する訴訟が更生手続開始前に係属した場合において,当該訴訟が会社更生法156条又は158条の規定により受継されることなく終了したときは,当該訴訟に係る訴訟費用請求権は,更生債権に当たる。
あてはめ
訴訟上の救助制度は、敗訴当事者負担の原則(民訴法61条)を前提に、資力のない者に対し「勝訴の見込みがないとはいえないとき」に限り費用の支払を「猶予」するものである(同法82条1項、83条1項)。免除ではない以上、全部敗訴の確定により勝訴の見込みが完全に失われ、費用負担も確定した段階では、もはや救助決定の効力を維持することは予定されていない。したがって、取消手続という形式を要さず当然に失効すると解される。
結論
救助決定は当然に失効するため、裁判所は民訴法84条の取消決定を待たずに、抗告人に対して猶予した費用の支払を命じることができる。
実務上の射程
訴訟上の救助決定後の事情変更(資力の回復等)に基づく取消(84条)とは異なり、訴訟完結時の勝訴見込み喪失に伴う失効を認めた点に実務上の意義がある。答案上は、救助決定の効果が「免除」ではなく「猶予」に過ぎないという制度趣旨から論証を構成する際の根拠となる。
事件番号: 平成16(行フ)4 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 棄却
訴訟上の救助の決定に対し,訴訟の相手方当事者は,即時抗告をすることができる。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成29(許)1 / 裁判年月日: 平成29年7月20日 / 結論: 棄却
既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担は,執行裁判所が,民事執行法20条において準用する民訴法73条の規定に基づいて定めるべきである。
事件番号: 令和5(許)1 / 裁判年月日: 令和5年10月19日 / 結論: 破棄差戻
1 共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合において、訴え提起の手数料につき各原告に対する訴訟上の救助の付与対象となるべき額は、上記訴訟の目的の価額を基礎として算出される訴え提起の手数料の額を各原告の請求の価額に応じて案分して得た額に限られる。 2 共同して訴えを提起した各原告…
事件番号: 平成28(許)40 / 裁判年月日: 平成29年9月5日 / 結論: 破棄差戻
訴訟費用のうち一定割合を受救助者(訴訟上の救助の決定を受けた者)の負担とし,その余を相手方当事者の負担とする旨の裁判が確定した後,訴訟費用の負担の額を定める処分を求める申立てがされる前に,裁判所が受救助者に猶予した費用につき当該相手方当事者に対して民訴法85条前段の費用の取立てをすることができる額を定める場合において,…